エレベーター ネタばれなし感想
ジェイソン・レナルズ作 青木千鶴訳
2018年 ニューベリー賞オナー賞受賞
内容 愛する誰かが殺されたなら、殺したやつを見つけだし、かならずそいつを殺さなければならない。―ウィルの兄が射殺された。悲しみに暮れるウィルが兄の洋服箪笥から見つけたのは、1挺の拳銃。仲間内に伝わる「掟」に従って犯人を殺すため、彼は部屋を抜け出し、エレベーターに乗り込む。自宅のある8階から地上に降りるまでの短い時間に出会ったのは、もう会えるはずのない、「やつら」だった…少年の復讐のゆくえを斬新な手法で描く衝撃作。
感想 散文的な文章の形式や文字のレイアウト、アナグラムなどの遊び要素が新感覚で面白かったですね(∩・∀・)∩。
ノイズのような背景が、エレベーターのなかと主人公の心の荒み具合を表しているようで、印象的。
続きを読むシカゴよりこわい町 ネタばれなし感想
リチャード・ペック作 斎藤倫子 訳
1999年 ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
痛快度 ★★★★★ 満点
内容 嘘はつく、銃はぶっぱなす。そんな田舎のおばあちゃんを訪ねていくと、毎年必ず何かが起こる! 僕らが初めて見る本物の死体や鼠入り牛乳。正義のためなら手段を選ばぬ祖母と過ごした、痛快かつ心温まる夏の思い出。
「どうしたかというと」祖母が答えた。「家を壊して、押し入ってきたのさ。押し込み強盗だ。末っ子は少年院。でかくなり過ぎた三人は刑務所だね。引き金にかけた指が誘惑に負けちまったら、そのかぎりじゃないがね。このショットガンが欲しくてやってきたんだから、くれてやってもいいわけだ、両目のど真ん中にね」 本文より
感想 シカゴ育ちの兄妹が、夏休み、おばあちゃんの家で過ごすためやってきます。このおばあちゃん、なんともロックでアンモラルで好戦的。タフで負けず嫌いで頑固ときてます。こんな祖母と過ごす日々はアルカポネが牛耳るシカゴより波乱万丈な日々になること請け合い。なんともはちゃめちゃで楽しい、愉快痛快な物語でした。
巻き込まれて大変な孫たちを尻目に、こちらはわくわくしながら次は祖母は何をやらかしてくれるんだろうとページをめくっていましたね。
笑える本が読みたい方、スカッとしたい方、そしていい話を読んでちょっとほろりとしたい方にもお勧めです。
読んでいただき、ありがとうございました。
盗神伝 ハミアテスの約束 ネタばれなし感想
1997年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★☆☆☆ 2点
内容 「なんだって盗める」代々、盗人の家系に生まれついた少年ジェンは町中で、そういいふらしていた。
彼は王の助言者とその弟子たちに連れ出され、永遠の命と国を治める力を持つ伝説のハミアテスの石を求めて旅に出る。
感想 10年位前に読んだ時は、旅のシーンがだらだら長くて冗長だな、ずいぶんほのぼのした旅してるなと思った記憶しかなかった本作。
今回、久しぶりに読み直してみたらやっぱり序盤はいまいち盛り上がりに欠けますね('ε')。
続きを読むブライト島の乙女 ネタばれなし感想
メイベル・ロビンスン作 田中西二郎訳
秋元書房
※絶版してます
1938 年 ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★☆☆ 3点
メッセージ性 ★★★☆☆ 3点
内容 これはある島育ちの少女の物語で、この島は故郷としてたえず彼女に魔術のように呼びかけるのです。彼女は母親、父親と一緒に、この島に住んでいますが、彼女に強い感化を与えているのは、今は亡い、もと船長だった祖父で、四人の男兄弟よりも末娘の彼女のなかに、この老船長は再生しているのです。ふるさとであるこの島、祖父の思い出に最も深くつながっている一隻のヨット、そして忠実なボーイフレンドのデーヴ、それらと別れて彼女は本土の高校へ入学します。
島の生活とかけ離れた、世間ずれのした人々ばかりの学校生活は彼女にとってはまるで海図のない海を航海するような困難なものでした。彼女を馬鹿にしている同室生のセリーナとの交際や、朗らかで親切な男学生のロバートの魅力や、鋭い毒舌の持ち主で、しかも彼女には優しくしてくれるフレッチャー先生や、それらの人々との接触を通じて、どうにかこうにか、彼女は羅針盤をうまく調節することが出来たのでした。
感想 ヒロイン、サンクフルは快活ではつらつとしていて、読んでいて気持ちがいい・・・と思っていました。途中までは。
しかし読み進むにつれ、批判的になっていく主人公。わあ、この主人公めんどくさい。
続きを読むハロー、ここにいるよ ネタばれなし感想
エリン・エントラーダ・ケリー 作 武富博子訳 評論社
2018年ニューベリー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
内容 ヴァージルはおとなしい。活動的な家族の中で、「カメ」(いつも甲羅に閉じこもっているから)と呼ばれるほどだ。女の子を好きになっても「ハロー」とひとこと声をかけることさえできない。悩みがあるときは、自称“霊能者”のカオリに相談に行く。ある日、いじめっ子に古井戸に閉じこめられてしまったヴァージル。カオリ、その妹、ヴァージルが好きになった女の子ヴァレンシアが、協力して彼を救い出すまでの様々な事件を描く、涙と笑いの友情物語。
感想 話のテンポがよく、サクサクと進んで短めにまとまっていて読みやすかったです。
本作の特筆すべき点は主役の3人が、スクールカーストでは決して上位でなさそうなメンバーで構成されていることでしょう。小柄でさえないフィリピン系のヴァージル、難聴でみんなの仲間に入れてもらえないバレンシア、占いが好きだけど、割と外れてる日系のカオリというクラスの隅にいた子たちにスポットを当ててくれています。
続きを読む黄色い老犬 ネタばれなし感想
フレッド・ギプソン作 山西英一訳
1957年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
ワイルドさ ★★★★★ 満点
内容 1860年代のテキサス、父親が牛を売りに出かけた間、父親から家をまかされた少年トラビスと、迷い犬との間に起こった様々の出来事が少年の目を通して描かれる。
すると母親熊が沢の岸をチビのアーリスと子熊のいるほうへ突進したちょうどその時、灌木の茂みから黄色なものがサッとひらめいた。それは、あの大きなイェラーだった。犬は怒った雄牛のように吠えたけった。大きさも体重も雌熊の三分の一もなかったが、横合いからパッと躍りかかると,みごとに雌熊の足をすくってゴロッと転がした。 本文より
感想 かなり古い話で、動物ものということで、きつそうだな、と敬遠してた本書。
まあでも読んでみたら予想を上回る完成度とパワーを持った物語だったので読んでよかったです。とてもよく出来た話でした。普通の小説の3分の1くらいのボリュームでサクッと読めるのもいいですね。
続きを読むふくろう模様の皿 ネタばれなし感想
アラン・ガーナー 作
神宮輝夫 訳
評論社
1967年カーネギー賞受賞
面白さ ★★☆☆☆ 2点
メッセージ性 ★★☆☆☆ 2点
内容 「親同士が再婚したアリスンとロジャは夏休み、アリスンの母親の別荘にやってきます。深い谷間にある小さな村のお屋敷。この村出身であるグゥインの母親はお屋敷の家政婦に雇われ帰郷。三人の子どもは仲良くなる。ある日アリスンの部屋の屋根裏からたくさんの皿がでてくる。描かれた花柄のパターンを描き写していたアリスンはそれがふくろうの隠し絵なのに気づく。さっそく写した紙を切り抜き組み合わせるとふくろうの置物ができる。が、翌朝になるとそれはどこともなく姿を隠す。しかも皿からはパターンが消えている。憑かれたように、何枚も何枚も写しとってふくろうを作り出すアリスン。実はそれはこの村に延々と続く悲劇を封じ込めたものだったのです。」
出典: ひこ・田中 http://www.hico.jp/sakuhinn/6ha/fukuroumoyou.htm
感想
・いい点 謎がどんどん出てくるあたりがそこそこ面白かったです。
・悪い点
以下のレビューは基本的に愚痴がほとんどです。本作が好きな方は気を害される可能性がありますので、読み進めないことをお勧めします。
続きを読むスアレス一家は、今日もにぎやか ネタばれなし感想
メグ・メディナ 作 橋本恵訳
2019年ニューベリー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
読みやすさ ★★★★★ 満点
内容 11歳のメルシは、サッカーの得意な女の子。
名門私立校に編入したのはいいけれど、クラスメイトはリッチな子ばかり。
新しい自転車を買うためにアルバイトだってしたいのに、
こまった家族のおかげでメルシはいつも右往左往。
家族って、ホントめんどくさい!
フロリダ発、あったかいけどちょっとビターな家族の物語。
感想 とっても読みやすかったです。文章がわかりやすいし、重めのテーマを深刻になりすぎずに書いていて、さくっと読める感じがいいですね(^O^) 。
続きを読むともしびをかかげて ネタばれなし感想
ローズマリ・サトクリフ 作
猪熊葉子 訳
1959年 カーネギー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性★★★★★ 満点
読み応え ★★★★★ 満点
内容 若い軍人アクイラが、いよいよ衰退したローマが四百五十年もの歴史に終止符をうち軍団をブリテンから撤収する時、軍団に加わってローマに中世を尽くすか、自分の家族のいるブリテンにとどまるかその選択に苦しんだあげくついに脱走し、その後蛮族に父を殺され、妹をさらわれるなど、苦難の数々を経験する物語。
しかし、アクイラは、じぶんの愛するこの家庭のしずけさは表面だけのことで、その下ではブリテンを守るための戦いがおこなわれていることを知った。そしてじぶんの家庭には、サクソンの海賊の略奪よりも、もっとほかの危険が迫っていることも知ったのだった。
突然アクイラには、いま過ぎ去ろうとしているこの瞬間が、ふたたびめぐってこない花のさかりにでもたとえられるように思われた。「ここにもう一万晩座ったとしても、今夜とおなじ夜はもうめぐってくることはないのだ」そしてアクイラは無意識のうちに、すぼめた手の中にその夜を包み込もうとでもいうようなしぐさをした。まるでもうしばらくの間、手の中にその貴重な夜を安全にしまっておこうとでも言うように。」 本文より
感想 読み終えた直後の感想は「すごい物語を読んでしまった (゚Д゚) 」でした 。
この重厚感、ドラマ性の高さ、文章の美しさを言葉で伝えようとしても、私の稚拙な表現力では追いつきません
物語は主に主人公アクイラの一人称で進むのですが、その内面のドラマの深いこと!人の心の機微がすごく繊細に書かれています。
続きを読む魔法にかけられたエラ ネタばれなし感想
ゲイル・カーソン・レヴィン 作
三辺律子 訳
サウザンブックス社
※旧訳「さよなら、いい子の魔法」はサンマーク出版
1998年ニューベリー賞オナー賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
女の子の夢が詰まってる度 ★★★★☆ 4点
内容 ロマンティック・コメディ要素満載のファンタジー作品。 決していい子なだけではないヒロインが、 自分の意思で幸せをつかみ取る、現代版シンデレラ・ストーリー。
生まれたばかりで、妖精に「従順」という贈りもの(というより呪い?)を与えられたヒロインのエラは、他者からのどんな命令にも「従順」に従わなければならないという運命を背負っている。その呪いが気に食わないエラは、おとなしく従順になるどころか、かえって反抗的な、でも明朗な少女に成長した。十五歳になる直前、最愛の母を亡くしたエラは、大人の建前ばかりが交錯している母の葬儀の場で、大声で泣き出してしまい、怒った父親に追い出される。墓地のいちばん大きな木の元で泣いていたエラは、そこで背の高い青年に出会った。褐色の巻き毛と浅黒い肌をしたその青年は、エラよりふたつ年上のシャーモント王子で……。
感想 2000年出版の「さよなら、「いい子」の魔法」が絶版した後に、2016年にクラウドファンディングで再出版された本書。
女性向け作品は苦手ジャンルなので、今回感想はシンプルに箇条書きで書いていきますね。
続きを読むビーストの影 ネタばれなし感想
ジャニ・ハウカー 作
田中美保子 訳
レターボックス社
1985年 ガーディアン賞受賞
面白さ ★★★☆☆ 3点
メッセージ性 ★★★☆☆ 3点
良くも悪くもイギリスらしさ ★★★★★ 満点
内容 ぼくは、ビル・カワード。ネッド・カワードの息子で、チャンダーじいちゃんの孫。正真正銘まぎれなし。そして、このぼくが、たったひとりだけ、ほんとうにビースト(獣)のことを知っている人間。だのに、だれもぼくの話を聞いてくれない。だぶん、きみも、ちゃんと聞いてくれないんだろう?ま、いいさ。とにかく、話すよ。それは、一月のある寒い晩、おやじが仕事から帰ってきたとき、始まった……
感想 つまらなくはないけど、ところどころ惜しい作品でした。
主人公をとりまく状況は、子どもにはきついものでしんどいだろうなと同情心が沸いてもいいはずなのに、なぜか共感をあまりできない。
なぜだろうかと考えたところ、主人公が淡々としてお父さんのダメさ加減を目の当たりにしても、周りで大変なことが起こっても、そんなに悲しんだりショックを受けたりしてなさそうなところに一因があるかもしれない。
続きを読むマイゴーストアンクル ネタばれなし感想
ヴァージニア・ハミルトン作 島式子訳
原生林
1983年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★☆☆ 3点
メッセージ性 ★★☆☆☆ 2点
内容 1980年代のアメリカ。お母さんと兄のブラザーと3人で暮らす15歳の黒人の少女ツリー。お母さんは仕事で忙しく、ツリーは障害のある兄といつも家に二人きり。
そんなある日、ツリーの前に、昔死んだ叔父さんの幽霊が現れ、ツリーに過去の出来事を見せてくれるようになった。
感想 やや、陰鬱な雰囲気の中で進行する、家族ドラマです。幽霊は出てきますが、ホラー要素は皆無。
正直私は本書の良さがわかりません。この作者さんとはいまいち相性が悪いようです💦
以下で、本書のいい点、悪い点を書いていきます。
続きを読む
アルプスの赤い旗 ネタばれなし感想
ジェイムス・オーマン(アルマン)作
持丸良雄訳
講談社(1958年版)
新訳は「山上にひるがえる旗」 学研(1971年版)
※ともに絶版してます
1955年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性 ★★★★★ 満点
熱血度 ★★★★★ 満点
内容 主人公のルデイ少年は、スイスのシタデル山のふもとに生まれ、毎日この山を見上げながらいつか必ずこの山を登ってやろうと心を燃やし、夢を見ていました。
だが、シタデルは、アルプスの数ある山々のうち、まだだれ一人登ったことのない、空にそびえたつ巨大な山です。
山になれた村人さえ、このシタデルには恐ろしい悪魔がすんでいると近寄ることさえ恐れています。けれどルデイ少年は勇敢にこの魔の山に立ち向かってゆきます。
感想 すごくおもしろかったです!冒険小説として、非常によく出来た作品でした。
本書のテーマは「困難な夢にめげずに立ち向かうこと」だと思うのですが、ルデイの「立ち向かう勇気」はすごいです(*´∀`人)。周りにどんなに反対されようと、命が危なかろうと自分の夢を貫ぬくなんて、勇気がないと出来ないんだなあと教えてくれます。
続きを読む