いぬがやってきた ネタばれなし感想
挿し絵 モーリス・センダック
講談社(※絶版してます)
1959年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
感動度 ★★★★☆ 4点
内容 ニワトリ小屋で飼われていた一匹の小さいめんどりは片足を凍らせてなくしてしまう。それがきっかけで小屋のニワトリたちからいじめられるようになるが、フラッとやってきた心優しいのら犬が小さなめんどりを守ってくれるようになる。しかしめんどりの飼い主の男は犬を飼う気がないので見つかったら追い出されてしまうだろう・・・。
「このとき、いぬは、昼間とはまるで別ないぬのようにみえた。いまは、おとなしくもなければ、つかれきったいくじなしでもなかった。自分自身に課した、ちゃんとした目的と義務をもついぬだった。小さな、赤いめんどりを守らなければならないという役目をおったいぬだったのだ。」 本文より
感想 リアルな動物同士の友情ドラマですね。読んでいても、ディヤングの動物への愛情や優しさが感じられます。作者のディヤングは農場出身だけあって動物を書くのがうまいです。
ディヤングの書く動物はしゃべらないのに人間のようにしっかり感情を持ち、性格も描かれています。ディヤングの作品には動物が多く登場するけれど、皆キャラクターとしての性格がしっかり描かれていますね。
犬としての気質、ニワトリとしての性質をしっかり持った上で人間のように、怒り、悲しみ、他の誰かを心配し、さびしがり、恋しがり、愛しおしみます。
長年間近に動物と接してきたからこその説得力なのでしょう
読んでいる側もいつの間にやら、犬やニワトリたちを人間のキャラクターを変わりないものとして彼らと一緒に泣き笑う。そして読み終わると心が温かくなる。ディヤングはそんな作家さんです。
そして挿絵はあの「かいじゅうたちのいるところ」のモーリス・センダックなのです。この本においては物語に集中させるためか、目立たない無難な絵を描いてて、絵本のときの独特のフンイキは消されいますが・・。
余談になりますが、ひとつ個人的に引っかかる箇所がありました。ここからは多少ネタバレになるので注意です。
反転
小さなめんどりを可愛がっていた男は犬にめんどりが殺されたと誤解する。そして怒りに駆られて犬を殺そうとする・・・・。
作中ではこの男は「善良」と何度も書かれているのです。しかし私にはそれは疑問です。もし家畜として飼っていたニワトリを犬に殺されて、財産を守るために犬を殺すならまだちょっとわかります。けれど、男自身も言ってますが、男はたまたま家畜だっためんどりに情がうつったのです。そしてかわいがっていためんどりを食い殺したと思い込んで犬を憎むのですね。
犬が食べるために狩をするのは当たり前でそれを悪とするのはナンセンスと感じました。男だって日々の食事で動物を食べているはずですし。
これはいってみれば男の「逆恨み」であり、「独善」ともいえるのではないかと。読んでいてその点だけが気になりました。