生命の神秘を探る 感想
キャサリン・シッペン
偕成社(※絶版してます)
1956年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★★満点
メッセージ性 ★★★★★満点
感動度 ★★★★★満点
ノンフィクション 歴史 自然科学
内容 全体の構成は、ほぼ四つの部分にわかれており、第1章『「命」の不思議』は、先史時代から中世期までです。
その間、動植物はすべて人間のためにある物と考えられていた時代で、わずかにヒポクラテスとアリストテレスが、生物それ自身のあり方に目をむけた人として、とびぬけてなっています。
第2章『科学の夜明け』は、ルネサンスから十八世紀までです。また第3章『生物の進化と細胞のなぞ』では、近代生物学の前駆をなした進化論と細胞説が姿を現わした、十九世紀が描かれています。
「つい百年ばかりまえ、つまり1860年代にいたるまでというものは、世界のほとんどすべての人びとは、この創成期(※旧約聖書)の中に書かれてある天地創造のものがたりを一言半句たりともうたがうべからずと教えられ、またその通りに信じこまされてきたのでした。」
本文より
感想 本書は子供さんに科学に興味を持ってもらうのにとてもいい本だと思います!ニューベリー賞のノンフィクションはかなり読ませるんです(゚∀゚)。わかりやすい上に内容が充実しています。
古くは紀元前4世紀のギリシャ時代から近代までの科学の発展を追っていきます。舞台は全てヨーロッパ。近代科学の発展はヨーロッパで始まっているんですね(・ε・) フーン。
こうして科学の大きな発展があったときに絞って順番に見ていくと人類の歩みそのものを見ていることになり、とてもおもしろいです。
興味深いのは1542年のヨーロッパで人間の解剖を元にかなり正確に絵にしたところ、医師たちはそれまでの常識ばかり主張して非難ごうごうだったとかヽ( `Д´)ノ、16世紀まで人類は自分たちのまともな骨格さえ知らなかったとか17世紀、顕微鏡が発明されるまでシラミやウジは汚物の中から生まれてくると思っていたとかΣ(・ω・ノ)ノ! 、18世紀にようやく地球のそれぞれの土地にしかない植物や動物の存在を知るようになったとか、19世紀の終わりまではほとんどの科学者までが旧約聖書の創世記を信じていたとか(´・∀・`)ヘー。
知識を確かなものにするにはみんなで知識を寄せ集めて協力し合うべき、という考えになったのも16,17世紀以後のことらしいんです。やっぱり知らないとものの考え方すら違ってくるんですね。過去の人々がこんな風に間違った仮説や議論をああでもない、こうでもないといっていたのは、正しいことを広める手段もなく、印刷技術すらない時代ではやっぱり事実を確認するすべもなかったし、今みたいに簡単に知識も交換できないしで、当時の状況を考えると当たり前なんだなと(゚~゚) フウン。
草花一つとっても絵にしたところで実物と違ってしまって間違って伝わったりしたとか、本当に正しい情報を得るのが難しかったんですね。現代に生きていている私たちは知識の交換や実際に見て実験して確認することの大事さを潜在的にでもみんな知っていますよね。
今、ミジンコの存在とかダーウィンの進化論とかメンデルの法則とか当たり前みたいに知っているのは、昔の人たちががんばって真実をつかもうとしてくれた結果なんだなあ、と思います。ありがたいことですm(_ _)mヘヘ―。
知識の大切さを知れて、いくらでも自分の好きな知識を得られる環境にいるのはどれだけ恵まれているかって教えられた気がします。
ちなみに15世紀から16世紀を著者は科学の夜明けとして、「夢から醒めたの人間のよう」と世の中の動きが活発になっていったことを書いています。
時はルネッサンス。それまでの教会の教えは絶対、と盲従していたころから、それを疑い論理的思考を持つ人が増えていった時代。
私は決して科学万能主義じゃないけれど「知識は闇を照らす光」と考えてます。この時代はまさに中世の闇、暗愚の時代から知識の光が差す時代への移行期。中世の闇が知識の光に照らされて人類の目の前に真実が現れてきた、ということでしょう(・0・ )。
知識を持つ意味、真実を探る意味を考えさせられますね。
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