ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ ネタばれなし感想
アンジー・トーマス作
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
イマドキ度 ★★★★★ 満点
2017年ボストングローブ・ホーンブック賞受賞
内容 ギャングがはびこる町に暮らす女子高生、スター。ある晩、幼なじみのカリルが白人警官によって射殺されてしまう。目の前で起こったこの事件は、事実と異なって報道されていく。事件によって徐々に変わりゆく周囲と、スター自身の心。スターは覚悟を決めて立ち上がる。カリルの声となるために。
感想 あらすじを読んだ感じでは、非常に重たい話かな、と覚悟して読み始めたけれど、思ったより重さやしんどさはなく、普通の女子高生であるスターが友達とふざけたり、恋愛で悩んだりするヤングアダルト小説の部分もあったりで、読みやすいです。
けっこう長い本なので、そこをしんどく感じる方がいるかもしれませんが‥。日本にいるとわからない、被差別側の思いや怒りを読むのは興味深かったです。今後の活躍が期待されている若手作家のデビュー作として読んで損はないと思います。
オチのないつぶやき
・今どきのアメリカの高校生の暮らしが垣間見れ、面白かった(゜∀゜) 。ハリーポッターとか、タンブラーとか。
ポップタルトってタルト生地にジャムがはさんであるお菓子なのか。しつこそう・・・。
ポップタルト
ナウ・アンド・レイターキャンディ
出典:https://www.nowandlater.com/
・スターとクリスが意気投合するきっかけになったテレビドラマ(p91) 「ベルエアのフレッシュ・プリンス」は面白そうだなあ。日本未公開だけど見たいです。
The Hate U Give | Official Trailer [HD] | 20th Century FOX 映画化もされたようですね。
やまねこ翻訳クラブの本書の紹介ページ
ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ (海外文学コレクション)
- 作者: アンジー・トーマス,服部理佳
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2018/03/24
- メディア: 単行本
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以下、 反転。ネタバレ注意
読んでてちょっと気になったこと。
ニューベリー賞オナー賞受賞作である、黒人奴隷がテーマの1933年「自由への地下鉄道」や、1969年の「奴隷とは」も読んだし、映画の「サラフィナ」や「カラーパープル」で黒人差別の残酷さを見て、決してあってはならないことだとすごく思います。そのうえで、
・スターが、「白人であるクリスと付き合うことは黒人男性を否定しているのだろうか」と考えたところでは、違和感ありありでした。日本でぬくぬく暮らしている自分が意見するのは筋違いかもしれないけど、そうやって「白人・黒人」で分けて考えるから差別はなくならないんじゃん!と思ってしまった(´-ω-`)。そりゃあ、被差別側は、日常的にいわれなき差別を受けて、被害者意識も強くなるだろうし、人種差別ってかなり入り組んだ問題で、理想論は通らないですけどね。
ヘイリーの言った「フライドチキンだと思いなさい」のどこが差別的なのか疑問だったのですが、先日、本書の翻訳を担当された、服部 理佳さんにお話を聞かせていただく機会がありました。
服部さんによると、「アメリカでは、フライドチキン=黒人の好物」という固定概念があるのだとか。
つまり、スターは親友のヘイリーに固定概念でもって「あんたの大好きなフライドチキンに飛びつく様になさい!」と言われたということです(´・ω・`)。
ヘイリーにその気がなくても、親友であるはずの人に差別用語を使われて不快になる気持ちはわかります。最初読んだとき、スターがあそこまで怒るのが理解できませんでしたがやっと「なるほど」と納得しました。
でも、思ってしまうのはヘイリーは、若さゆえの無神経やら勝手さはあるかもしれないけど、人種差別してる意識はないと思うんですよね。自覚がなしの差別というのはタチが悪いかもしれませんが、もっと穏やかなやり方はなかったのかな、とも思ってしまいます。
マヤとマイノリティ同盟を組んだ時なんかは、スター自身も「猫でも食べた?」には笑ってたのに、マヤにフォローせず、ヘイリーだけを悪者にしている印象でした。
スターって時々自分勝手ですよね。クリスに対して、自分はへそ曲げたら無視とかする割に、プロムの時、同じことをクリスにされたら怒るしσ( ̄∇ ̄;) 。こういうことが気になって、スターに感情移入しきれないとこもありました。
まあ、私は人種差別で嫌な思いをしたことがないので、アメリカで黒人が受けている「下手すれば殺される」ほどの差別の悲痛さを経験してないからこう思うのでしょうね。
読んでいただき、ありがとうございました!