首のないキューピッド ネタばれなし感想
ジルファ・キートリー・スナイダー 作
冨山房(絶版してるので、読むとしたら、図書館で取り寄せなどでどうぞ)
1972年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
はらはらドキドキ度 ★★★★★ 満点
内容 デービットの家に、義母モリーの娘、アマンダがやってくる。アマンダは超能力に興味を持つ気むずかしい少女で、なかなか家族とは打ち解けない。ある日、彼女が降霊術を使ったことから、ふしぎな事件が起こった。
「ポルターガイストがなんだか知らないの?」とアマンダがきいた。「それは幽霊なのよ。(中略)」
「この幽霊が現れるのは、ほとんどいつも、ある年ごろの子どもたちがいる家なのよ」
「いくつぐらいの」とデービッドがきいた。
アマンダはデービッドのほうに向いたが、デービッドを見ているようには見えなかった。「あたしぐらいの年ごろ」とアマンダは言った。 本文より
感想 出だしからいいです。最初の数行で、もう物語の舞台はちょっと怪し気な大きな館で、これからミステリー物語が始まるんだ(*゚∀゚)=3ハァハァ、と思わせる導入は秀逸。
物語全体に漂う、オカルトめいた緊張感には引き付けられるものがありますね。
ジルファ・キートリー・スナイダーさんの作品の特徴なんですが、どこか温かみがあるというか、作者は優しい人なんだろうな、と感じさせられるんですよね。どの作品も読んでて不快になることが全くないんですが、これは作者さんが意図的に、子供の読者が嫌な気持ちになるような描写を避けて書いてくれているのだと思います。
その割に謎や事件はドキドキハラハラさせてくれるので、飽きずに最後まで楽しく読めました(^O^)。
以下、ネタバレのため反転
・普通に読むと、デービッドが、11歳にしては、いい子過ぎるというか、物分かりがよすぎかとも思われるのですが、作中でその理由について説明がされているので、気になりませんでした。
・それにしても、アマンダは現代では読者に即「中二病」判定されて終わりそうですよね。登場して間もなく、彼女が本当は不思議な力を持ってる子ではなく、不思議な力を持ちたがってる子だとわかります。ここら辺、実にリアルな女の子像だと感じます。
・アマンダの言う、「あらゆりもののための仕返し」というのは、アマンダを取り巻く、ひいきする先生やお父さんを捨てたお母さん、口うるさくてえらぶったイングリットなど、アマンダの直接の関係者にとどまらず、超自然的なものを信じない世の中などにたいする反発もあったのかもしれません。
こうした不満を持ち、大人の鼻を明かしてやりたいと思うのは、アマンダくらいの年頃になれば、むしろ健全な成長の一環ですらあると思います。自分に身に覚えのない、本当のポルターガイストが起きた途端、アマンダが素直になったのは、自分の理解を超えるものに対する、畏怖の気持ちによるものもあるのでしょう。
同作者さんの「魔女の猫ウォーム」も面白くてハラハラドキドキする本です(*゚▽゚*)。1973年のニューベリー賞オナー賞を受賞!
感想は こちら。
↓この作品も大好きです。
- 作者: ジルファ・キートリー・スナイダー,中村悦子,Zilpha Keatley Snyder,小比賀優子
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1989/09/30
- メディア: 単行本
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読んでいただき、ありがとうございました!