マイゴーストアンクル ネタばれなし感想
ヴァージニア・ハミルトン作 島式子訳
原生林
1983年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★☆☆ 3点
メッセージ性 ★★☆☆☆ 2点
内容 1980年代のアメリカ。お母さんと兄のブラザーと3人で暮らす15歳の黒人の少女ツリー。お母さんは仕事で忙しく、ツリーは障害のある兄といつも家に二人きり。
そんなある日、ツリーの前に、昔死んだ叔父さんの幽霊が現れ、ツリーに過去の出来事を見せてくれるようになった。
感想 やや、陰鬱な雰囲気の中で進行する、家族ドラマです。幽霊は出てきますが、ホラー要素は皆無。
正直私は本書の良さがわかりません。この作者さんとはいまいち相性が悪いようです💦
以下で、本書のいい点、悪い点を書いていきます。
いい点 登場人物の、負の感情や欠点などの描写がきれいごとではなく、割とリアルというか生々しいです。(だからこそ、お話としてきれいにまとまらないでグダグダになっている、という欠点も(゚~゚))
悪い点
・ストーリーに、「夢」とか「わくわく」といったエンタメ性が皆無。全体的に雰囲気が暗くて、私が子供の時に読んでも全く面白いと思わなかっただろうな、と。
・ただ突っ立っているだけのマネキンみたいな幽霊が出てくるだけで、話としてつまらないと感じます。叔父さんが微動だにしないのはどんな意図があるんでしょうか。考えても私にはわかりません(´-ω-`)。
・この作者さんによくみられる傾向ですが、文章がわかりづらくて、頭にすっと入って来なくて取っ散らかってます。主人公の一人称視点で文章が書かれているけれど、その心理描写が安定していなくて、情緒不安定っぽいんですよね。話についていけなくて、置いてきぼりの展開と感じることもしばしば(´ヘ`;)。
時々、セリフや文章の語尾がおかしくなるのもすごい違和感があります。
ハミルトンの本は3作読みましたが、共通して感じるのが、語り手(主人公)の独りよがりっぽさ。話が通じなそうというか、こちらに話を分からせる気が無く、会話を勧めていくような、一人で勝手に怒りだしたかと思ったら笑い出して、こっちはひたすらぽかんとしてるような感覚です。ラストの終わり方まで唐突でしたね。
・翻訳だから仕方ないかもしれないけど、登場人物の名前と相性が一致しづらく、突然見知らぬ名前が出てきて「テレサって誰だっけ?」となります。「※テレサはツリーの愛称」みたいに注意書きが欲しかったです。まあ日本では大人の本として出されているから、そこまでしなくていいのかもしれませんが。
ところでポーフィリアについてググったらこんなのが出てきました。
以下、wikiから抜粋。
「太陽光などの刺激によって過敏症を引き起こし、それが肝臓への深刻な負担となることから、一生涯太陽光を避ける生活を余儀なくされる皮膚型と、腹部を中心に神経症状を訴える急性型などが確認されている。(中略)
初期段階では腹痛、吐き気、急性神経障害、筋脱力、癇癪、あるいは幻覚、うつ病、不安、偏執症を含む精神障害など神経系に影響を与える。(中略)
ヴァージニア・ハミルトンはその著作『Sweet Whispers, Brother Rush』 (1982)の鍵となる要素としてポルフィリン症の人物を登場させた。同作ではポルフィリン症をアフリカ系アメリカ人特有の病気としているが、人種による違いはない」
とのこと。
なるほど。ポーフィリアって初めて聞いたけど、怖い病気ですね(゚д゚;)。
本作のことがいきなり出てきてちょっとびっくり。
読んでいただき、ありがとうございました!
以下は児童文学評論家、赤木かん子さんのレビューです。
http://www.hico.jp/sakuhinn/7ma/my02.htm
こちらは芹沢清実さんのレビュー。
http://www.hico.jp/sakuhinn/7ma/mygost.htm
同作者さんの、ニューベリー賞作品の私の感想はこちら。
☆ おまけ
作者、ヴァージニア・ハミルトンさんについて。
画像出典 https://en.wikipedia.org/wiki/Virginia_Hamilton
- 1936年オハイオ州イエロースプリングス生まれ。母方の祖父は逃亡奴隷、父方の祖母はチェロキー・インディアンという家族の5人の子供の末っ子として生まれる。
- 1974年、著作「偉大なるM.C」のニューベリー賞受賞で、メダルを受賞した最初の黒人作家になる。
- 1995年に、アメリカの児童文学への貢献に対してローラ・インガルス・ワイルダー賞を受賞。
- 2002年2月19日没。
- 2010年に米国図書館協会がコレッタスコットキング/ヴァージニア・ハミルトン賞を設立。アフリカ系アメリカ人の著者、イラストレーター、または著名な文学的貢献を果たした児童書、およびヤングアダルト本の著者、イラストレーターに授与される。この賞は、特にアフリカ系アメリカ人の生活、歴史に焦点を当てて、故ヴァージニア・ハミルトンと彼女の文学の貢献に敬意を表して設立された。
アメリカだと特に評価の高い作家なんですね。
以下ネタバレを含むぼやき感想 反転
ダブが死んだ後のツリーの悲しみは共感できるものでした。そこは丁寧に書かれていましたね。
読んでいて、途中まで「なぜマヴィは、ダブをほっておくんだ!」と怒りすら感じましたが、読むにつれてマヴィの恐れや不安は当然だな、とすっかり納得しました。
ツリーとダブが子供だった1970年代は、有色人種差別法のジム・クロウ法が撤廃されてまだ数年で、当時黒人の女性がシングルマザーをするのは大変なことだっただろうと容易に想像がつくし。
黒人というだけで、暴行されたり、就職口も少ない世界で子供二人抱えて、女手一つで子供たちを養って守っていかなきゃならないなんて想像するだけでしんどい(>_<)。
しかし一番思ったのは、叔父さんは、何のために出てきたのか、ということでした。
話の流れから見て、ダブを救うためではないですよね。
では、ツリーを救うため?あるいはマヴィを?
逆に考えて、もし叔父さんがいなかったらどうなっていたかというと、ツリーは家族の過去を何も知らない状態で突然ダブが入院するわけですよね。
それで寝耳に水状態でダブの病気のことを知らされて、マヴィとダブの関係とかも知らずにダブが死んじゃって。
そういう場合だったら、マヴィの気持ちも受け入れられないままだったのですかね?
うーん、過去のことを知れたのはいいことだったのかなあ。知らないなら知らないで、マヴィの再婚の後は同じような展開になる気がするけど。どうなんでしょうσ( ̄∇ ̄;)。