児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

ブライト島の乙女 ネタばれなし感想

f:id:g-mccaghrean:20200313145338p:plain
メイベル・ロビンスン作     田中西二郎訳   

秋元書房

※絶版してます

1938 年 ニューベリー賞オナー賞受賞  f:id:g-mccaghrean:20200313145447j:plain

面白さ ★★★☆☆ 3点

メッセージ性 ★★★☆☆ 3点

 

内容 これはある島育ちの少女の物語で、この島は故郷としてたえず彼女に魔術のように呼びかけるのです。彼女は母親、父親と一緒に、この島に住んでいますが、彼女に強い感化を与えているのは、今は亡い、もと船長だった祖父で、四人の男兄弟よりも末娘の彼女のなかに、この老船長は再生しているのです。ふるさとであるこの島、祖父の思い出に最も深くつながっている一隻のヨット、そして忠実なボーイフレンドのデーヴ、それらと別れて彼女は本土の高校へ入学します。

島の生活とかけ離れた、世間ずれのした人々ばかりの学校生活は彼女にとってはまるで海図のない海を航海するような困難なものでした。彼女を馬鹿にしている同室生のセリーナとの交際や、朗らかで親切な男学生のロバートの魅力や、鋭い毒舌の持ち主で、しかも彼女には優しくしてくれるフレッチャー先生や、それらの人々との接触を通じて、どうにかこうにか、彼女は羅針盤をうまく調節することが出来たのでした。

 

感想 ヒロイン、サンクフルは快活ではつらつとしていて、読んでいて気持ちがいい・・・と思っていました。途中まではf:id:g-mccaghrean:20200223055101p:plain

しかし読み進むにつれ、批判的になっていく主人公。わあ、この主人公めんどくさい。

 

ルームメイトのセリーナからのサンクフルへの嫉妬描写が何度かあり、セリーナがたまに嫌味な子として書かれているのがなんだかいかにも少女漫画的なヒロイン願望とか、被害者意識のように思えて共感出来ず。逆にサンクフルがセリーナに嫉妬してお母さんの言葉で慰められるシーンも、お母さんが一言多い人のように思えただけでしたね。

サンクフルがロバートに好意を寄せるのも唐突。

文章の前後がちぐはぐな印象を受ける。登場人物の感情の動きも唐突で感情移入しづらい。後半はさらに展開、サンクフルの心理描写、文章の視点もめちゃくちゃになっていき、ついていけなくなる。この世界の登場人物たちはしょっちゅう、不愉快になったり不快になったりするらしいですf:id:g-mccaghrean:20200313145704p:plain

本作は細かいことを言わなければ、多少のウーマンリブ的や、成長物語的な、メッセージ性を含む作品で、そこがニューベリー賞受賞の理由と思われます。

しかしサンクフル自身、時々わがままで自分勝手に行動する割に人の気ままさには難色を示す、そして友人でありライバルである容姿のいい同性に嫉妬されて嫌がらせされる、見目のいい男たちはこちらが好意を示さずとも勝手に追いかけてきてくれる。という非常に都合のいい少女漫画展開に思えてしまい、鼻につきました( ´Α`)ウゼー。

訳も、古いせいかサンクフルのお兄さんがおじいちゃんのような言葉遣いで話したり、「少女」といえばいいところを「乙女」といったり、ところどころの違和感が引っ掛かりました。

それらの細かいところは適当に流せれば本作の出来のいいところだけ見て「いい作品」と思えたのかも・・しれません。

読んでいただきありがとうございました。