盗神伝 ハミアテスの約束 ネタばれなし感想
1997年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★☆☆☆ 2点
内容 「なんだって盗める」代々、盗人の家系に生まれついた少年ジェンは町中で、そういいふらしていた。
彼は王の助言者とその弟子たちに連れ出され、永遠の命と国を治める力を持つ伝説のハミアテスの石を求めて旅に出る。
感想 10年位前に読んだ時は、旅のシーンがだらだら長くて冗長だな、ずいぶんほのぼのした旅してるなと思った記憶しかなかった本作。
今回、久しぶりに読み直してみたらやっぱり序盤はいまいち盛り上がりに欠けますね('ε')。
せっかく、冒険に旅立つんだから、もうちょっと段階分で読者の心を盛り上げる演出を仕掛けてくれてもいいのでは?
この冒険がどんな意味を持っていて、どれくらい重要をほのめかすとか、危険な旅になる予感とか伏線とか・・・。そういうのが欲しかったですね。
文句が多くて申し訳ないですが、いきなり、前知識なしの出発過ぎて、期待が膨らまないんですよねσ( ̄∇ ̄;)。
なので序盤90ページはやっぱり、わくわく感や物語のテンポの良さに欠けます。旅のシーンも毎日同じことの繰り返しだし。総ページ数も378ページと多いので、もっと短くまとめられたんじゃないかな、と思わなくもない‥。
主人公は凄腕の泥棒という設定らしいけど、それらしい回転の速さとか素早さとか観察力とかは別に強調されていないし。リアル描写に必要という判断だったのかもしれないけど、日の光に苦しむ主人公がじっくり書かれすぎたり、傷を手当てされるのに泣きわめいたりして、弱弱しいイメージばかり固まっていきますε-( ̄ヘ ̄)。
おかげで主人公ジェンは「弱いのにイキってる奴」というイメージが序盤で固定してしまった。
レビューサイトの本作の感想で、ある方が
「まず主人公。全然引かれない。何でも盗む盗人?盗みのシーンが大したことない!半分くらい読み進むまで、悪口と怪我の話しかないし、旅のシーンが全く面白くないです。」
と書いていたけれど、共感しましたね。
まあでも90ページあたりから周辺国との利害関係の話とか、主軸の伝説の話とか出てくるあたりから物語の方向性が見えてきて面白くなり、そこからは結構サクサク読めました。
良かった。ちゃんと冒険してくれて(´▽`) ホッ。
しかし、この作品の特徴の一つとして、冒険ものなのにアクションシーンよりも、印象に残るのは主要人物たちがだんだん仲良くなって昔の伝承を焚火を囲んで和やかに語って聞かせるという、妙にほのぼのした雰囲気です。なんか全体的に平和なんですよね。メイガスさんも思ったよりすごくいい人だし。
そう思って緩く読んでたら終盤、展開がいろいろ予想外でした。すっかり忘れていたのでいい意味で裏切られた。
以下ちょっとネタバレなので反転。
ジェンが「長い髪だと貴族に成りすますことも出来る」といった後に、メイガスが「お前を見ていれば、育ちの悪さがにじみ出てすぐわかる」というので、「じゃあ、貴族になれるというのはジェンの勘違いで、実はバレバレな変装を本人は騙してるつもりだったってこと?それとも作者がいい加減だから矛盾してるだけ?」とか思ったんですが、そういうことね。そんな細かいところも伏線だったんですね。
結論として前半の旅でダレるところを過ぎれば、まあ悪くありませんでした。メッセージ性とか教訓とかはほぼないですが、昔のヨーロッパっぽい冒険ものが好きな方は面白いかと思います。
読んでいただきありがとうございました。