テラビシアにかける橋 ネタばれなし感想
キャサリン・パターソン 作
1978年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★★ 満点
感動度 ★★★★☆ 4点
内容 絵の好きな少年ジェシーと、となりに引っ越してきた風変わりな少女レスリー。テラビシアと名づけた秘密の場所で、ふたりはあたらしい世界にめぐりあう。
感想
いい点
・前半は、この話がどこに向かっているのかわからず、たいしたことも起こらなくてちょっと退屈だったのですが、後半にジェシーがレスリーの家に行くようになるあたりから楽しくなってきました。
・聖書に書いてあることをうのみにせず、疑問を素直に持つレスリーは人として好き(^O^)。
・女の子と男の子の話だけど、恋愛じゃなく友情として描き切っているところがいいです。
悪い点―
・前半は特に話に娯楽性がなくて、大人はそれでも読むかもしれないけれど、子供だとつまらながって、読むのをやめてしまいかねないと思いました。
・登場人物が多くて、こんがらがります。
・ちょっと不思議なのですが、なぜジェシーをとりまく人たちはこんなに共感性がなく、保守的というか、融通が利かない人たちばかりなんでしょうか。この地では、子供は人に自分の親のどんな欠点も言ってはいけないとか虐待横行待ったなしですね。私がジェシーだったら確かに「こんなところ…」(`ヘ´#)って思うだろうな。
お母さん、お父さんは確かに無神経な人たちで、ジェシーを傷つけていることにも気づいていなくて、ジェシーが可哀想なのですが、姉に関しては、ジェシーは勝手に姉のリボンを盗んだりしてるので、姉だけを悪く言えない気がします。この本は基本ジェシーの一人称で語られるのですが、ちょっと周りの人たちの愚痴を言いすぎに思えて、読みながら「そんなに人を批判できるほど、あなたはりっぱなの?」とちょっと思ってしまいました。
・エドマンズ先生が、存在を忘れたころに急に再登場して、「この人誰だっけ?」とページをさかのぼりましたよ。ちょっとそこらへん唐突な印象でした。
雑談
途中で出てくる、おいしそうなお菓子トゥインキーズは日本でも買えるみたいです。
作中に日本の神話とか出てくるので、「お?」と思ったのですが、作者、キャサリン・パターソンさんは中国生まれなんだそうです。
1979年に「ガラスの家族」でニューベリーオナー賞を、1981年に「海は知っていた―ルイーズの青春」でニューベリー賞を受賞している、ニューベリー賞常連作家さんです。
- 作者: キャサリンパターソン,小松咲子,Katherine Paterson,岡本浜江
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: ペーパーバック
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キャラクターが多いので、簡単な説明をのせておきますね。
▲ジェシーの家族
エリーー上の姉
ブレンダ―2番目の姉
メイ=ベルー上の妹
ジョイス=アン一番下の妹
▲バーク家
ビルーレスリーのお父さん
ジュディーレスリーのお母さん
▲学校関係者
ターナー先生―校長
マイヤーズ先生―ジェシーの担任
ウェイン・ぺティスー学校で1番足が速い6年生。
ボビー・グレグスージェシーのクラスメート
ゲリー=フルチャージェシーのクラスメートでちょっとやな奴。
グレッグ=ウィリアムズーゲリーの子分。
メアリー=ルー=ピープルズージェシーのクラスメート。気取り屋。
ワンダ=ケイ=ムーアージェシーのクラスメート?気取り屋
アール・ワトソンージェシーのクラスメート?
ジャニス=エイブリーー7年生のいじめっ子
ウィルマ=ディーンージャニス=エイブリーの仲間
ボビー=スー=ヘンショウージャニス=エイブリーの仲間
▲ラーク・クリークの人
ティモンズさんーブレンダの友達のお母さん
以下、ネタバレのため反転。考察してます。
本書は、10年前に一回読んで、今回2度目になりますが、レスリーの死に対してのジェシーの言動は、最初に読んだときは、理解できなかったけど、改めて読み直すと、矛盾だらけで理不尽な思考がリアルですね。大事な人が死んだら、確かにこういう、不合理なことを考えちゃうでしょうね(´・ω・`)。レスリーを死なせる必然性は、物語を読んだだけではわかりませんでしたが、あとがきまで読むと理解出来ました。
そしてジェシーを悩ませた、自分の臆病さ、周囲との溝は、レスリーとの出会いによって変わったのでしょうか。
お父さんが、ジェシーへの無理解は、レスリーの死という大事件によって、変化の兆候を見せたように思えますが、例えば、お父さんがジェシーの絵を褒めてくれたとか、はっきりした描写があるわけではないですよね。
ただ、お父さんやお母さん、姉たちが理不尽だろうと、学校の人たちがこれまでと変わらずウザかろうと、レスリーのような、心から理解しあえる親友を持てたことで、ジェシーはこの後の、人生の逆境も立ち向かう勇気を得たのだな、と思えます。
テラビシアという想像の世界を作ることで、ジェシーは不快な現実から都合のいい空想の世界に逃げこんだ、
これは事実でしょう。
けれどジェシーにとって、テラビシアはただの逃げこみ先では終わりませんでした。
そこは想像力の豊かなジェシーが、自分の想像力を思い切り広げられる場所であり、怖がりで、学年で一番足の速い子でないジェシーが、自分に誇りを持てる場所だったのです。
そしてジェシーはレスリーの強さに惹かれ、彼女の死を乗り越えることでレスリーの強さをも受け継ぐことが出来たのではないでしょうか。
レスリーは死んでしまったけれど、彼女はジェシーにその勇気と強さを残していってくれたのですね。
希望を感じるラストだったと思います。
「苦しみと絶望の谷は、いつか希望の門にかわる――もしそこに橋があるなら」
本書は、2007年に映画化され、日本でも公開されています。
レスリー役は、 2001年ニューベリー賞オナー賞の受賞作、「きいてほしいの、あたしのこと ―― ウィン・ディキシーのいた夏」(私の感想はこちら)でオパール役を、「チャーリーとチョコレート工場」でガムをずっと噛んでる少女、ヴァイオレット・ボーレガード役を演じたアナソフィア・ロブちゃんが好演してます。レスリーにはちょっと大きいし(公開当時14歳)、ちょっと髪が長いけど、さばさばしたボーイッシュな感じは「ああ、レスリーだな」と思えます。
ジェシー役の男の子も個人的にはジェシーそのものって感じでした。
読んでいただき、ありがとうございました!