児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

おばあちゃんのたんじょう日ばこ ネタバレなし感想

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シャロン・ベル・マティス

1976年ニューベリー賞オナー賞受賞 f:id:g-mccaghrean:20190623231229j:plain

偕成社

 面白さ ★★★★☆ 4点

メッセージ性 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20190623231307j:plain

内容 100才になるデューおばあさんが大切にしている箱…。黒人一家の愛と歴史を描く心に迫る一冊。

 

感想 身近な家庭内ヒューマンドラマが好きな方にはお勧めしますf:id:g-mccaghrean:20190623231307j:plain短いので、気軽にすぐ読めますよ(^O^)!

 

現実にありそうな物語で、決して娯楽性はなく、ドラマティックな物語でもないのですが、作者さんがキャラクターのセリフから、その性格を立たせるのが上手なので、キャラが生き生きしています。おかげで淡々としたストーリーもなんだかリアルで面白く感じました。

おばあちゃんの語る、昔話がじんわり味わい深くて、たんじょう日ばこと銅貨のエピソードには、100年の歴史に、思いをはせちゃったし、おばあちゃんの若いころの話には「この人はきっと黒人受難の時代をたくましく、明るく生き抜いたんだろうな」とか、想像を膨らませる奥深さがありました(´∀`) 。

ただ、本書は、小学校初級から読めるということになっていますが、私の独断でいうなら、低学年には難しいと思います。(高学年くらい?)

 

おばあちゃんのたんじょう日ばこ

おばあちゃんのたんじょう日ばこ

 

 

以下、ネタバレのぼやき感想 反転

 

・ちょっと不思議だったのは、マイケルは子どもなのに、100歳過ぎた、耳も遠く、自分の名前も時々間違えるようなおばあちゃんと遊びたがるというのは稀有だなあ、と。

ふつうは子供って素直な分冷淡というか、「こんな寝てばっかりいて、話のかみ合わないおばあちゃんと遊んでもつまんない!(・ε・)」とかなりそうなものですが、そこらへんがニューベリー賞の児童書なのかな、とかうがった見方をしてしまいました。

 

・私は、家族に要介護の人がいたこともなく、嫁姑の確執などというのも、全く知らない世界の話ではあるのですが、やはりこれらの問題を耳にすることは多い昨今…。読みながら、ある時は主人公に感情移入し、ある時はおばあちゃんに、ある時はお母さん、お父さん、と主要キャラそれぞれの立場になってちょっと悩んでしまいました。それくらい、登場人物に肩入れできちゃうんですよ。

最初のほうの、お父さんのお母さんのやり取りにはいろいろと思うところがありました。お父さんから見た、嫁と(育ての)おばあちゃんの間の板挟み感と、それでも嫁のつらさを実は受け止めてあげられていなくて嫁とおばあちゃん両方に寄り添っているつもりで、その場しのぎの事なかれ主義になってしまってる感じ(。-`ω-)。

これも現代日本の嫁姑に挟まれたお父さんにさもありそうなリアルさです。でもお父さんの立場だったら、こう言っちゃうんだろうなあ。

 

嫁姑問題の経験はなくても、冒頭のお母さんの涙の訴えとか、箱や昼寝をめぐる、マイケル・おばあちゃん・お母さんの三者それぞれの主張のくだりでは、マイケルがおばあちゃん寄りすぎて読んでいて、「お母さんはお母さんの事情があるんだよ! (´ヘ`;) 」と心の中で訴えてました。

おばあちゃんは、ちょっとしたいたずらのつもりでの無視かもしれないけど、無視というものはほとんどの人類が最もされたくないことじゃないですか?(「私は人に意地悪をしたためしがない」という、おばあちゃんの言葉が本当なら、物を捨てられたことに対する意趣返しではないはず)

無視なんてされたら、その人に好かれていないと思うのは当たり前だし、しかもその人が一回も名前を呼んでくれたことがないんだったら、もうそれは当人の意図がどうだろうといじめですよ。

おかあさんが、おばあちゃんの大事にしているものを勝手に捨てるのがひどいのはわかります。

 

よくないけど、でもそれはお母さんの「おばあちゃんの世話をしなきゃ、身の回りを整理しなきゃ」という責任感からくるものでもあると思うんですよ。おかあさんは、おばあちゃんを清潔に、身ぎれいにしておく義務感を感じてるだろうし。

子どものマイケルにそんな大人の事情わかれっていうのは無理でしょうけど。

それにお母さんを非難するマイケルに、きちんと向き合って説明しようとするあたり、けっこう話の分かる、いいお母さんじゃないかと思いました。

おばあちゃんはおばあちゃんで、今までやってきたやり方で生活したいだろうし、ずっと大事にしてきたものを勝手に捨てられるのは立派な人権侵害ではあるし(´・ω・`)

うーーん。

各登場人物、みんなの気持ちがわかるから、誰が絶対正しいとか間違ってるとか簡単に言えないですね。

そういうところも本書が、たった80ページという短さなのに、人間描写がいかにしっかりしてるかということを感じました。

読んでいただき、ありがとうございました!