魔女ジェニファとわたし ネタばれなし感想
カニグズバーグ作 松永ふみ子 訳
1968年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
内容 ニューヨーク郊外の小学校に転校してきたばかりのエリザベスは,ハロウィーンのおまつりの日に,黒人の少女ジェニファと出会いました.自分は魔女だというその風変わりな少女とエリザベスは,秘密の約束をかわします….『クローディアの秘密』とニューベリー賞をあらそった,カニグズバーグ初期の代表作.
感想 カニグズバーグというのは、不思議な作家で、冷静に客観的に淡々とした視線で、各キャラクターの個性や弱点を提示し、彼らがおかれている状況を観察するように描き出していきます。
今回もそのカニグズバーグ節がしっかり発揮されているうえ、「魔女修行」という、魅力的なお題も何ともわくわく(゚∀゚*)しますね
魔女への憧れとか、いい子ぶりっこに対する反感とか、等身大の女の子の心情世界が実にリアルですね。子供から大人まで、楽しく読めるお話です!ただ、男性にはわかりづらいというか、感情移入しづらいかも。
読んでいただきありがとうございました!
- 作者: E.L.カニグズバーグ,E.L. Konigsburg,松永ふみ子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/05/18
- メディア: 単行本
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以下ネタバレ反転
それにしても、本書は子供のころから何度も読んでいるのですが、子供のころは気づきませんでした。
要するにジェニファってとどのつまり・・・・・・・・・「中二病」
(ノ∀゚*)アチャー。
「魔女はなくしものなんかしないものよ」って(ノ∀゚*)アチャー。
これ、大きくなったら絶対黒歴史になるやつじゃないですか。「あなた昔魔女だったわね( ´∀`)」とかいって親兄弟にからかわれるパターンですよ。
とはいうものの、うん、私もやってましたよ、「魔女ごっこ」
幽霊と交信しようとしたり、友達と秘密の薬という名の色水作ってましたよ(ノ∀゚*)アチャー
でも、私と違い、ジェニファには、エリザベスを信じさせるだけのカリスマ性
と賢さがありますね。
読者も途中まで信じてしまった人がいるのでは?
あと、どうでもいいかもしれないけど、ジェニファの両親は娘を自由にさせすぎの感
骨とう品ファッションで歩き回らせるわ、魔女のタブーを順守した生活をさせるわ、雇われている住み込み先で、大鍋とか鉢とか植物とか、失敬しまくって好き放題じゃないですか!
お母さんが学芸会を見に来るのだから子供に無関心とか忙しすぎるわけでもなさそうだけどなー。
さて、ここからはまじめに考察していきます。
ジェニファが履いている、今にも脱げそうなぶかぶかの靴は、彼女が年不相応に大人ぶって見せていたことのメタファーかと思います。
そう考えてみると、二人の出会いのシーンも意味を持ってきます。エリザベスが最初に見たのはジェニファの足です。エリザベスの頭上にジェニファの足があり、エリザベスは目の前にぶら下がる、その足に靴をはめてあげています
。
古来より、相手の足の位置に自分の頭を下げるのは世界共通の服従のポーズですよね。ここですでに二人に上下関係は決定しているのです。
そして「靴を履かせてあげる」ということは、エリザベスがジェニファの部下になる、という「契約」であると同時に、エリザベスがジェニファの「見せかけの大人っぽさ」を保つ手助けをする、という二重の意味合いを含んでいるのではないでしょうか。つまりここですでに二人が主従の契約を結ぶことを暗示しているのです。
ところで、なぜジェニファーは大きすぎる靴を履きながらも、躓かずに歩くことが出来るのでしょうか。
これは、先ほどの解釈に照らし合わせて考えていけば、答えらしきものが見えてきます。
「靴=ジェニファの見せかけの大人っぽさ」であるならば、躓かずに歩けたジェニファは、身の丈に合わない役回りを上手くこなしていたことの表れととれます。彼女が本を読みながら歩けたというのも同じ解釈で通じます。「本」という世界に没頭しながらも、ジェニファは歩道を上がり降りしたりドアを開けられるほど、周りが見えていたのです。ようするジャニファは「自分は魔女」という想像世界に浸りながらも、周りをしっかり見ることが出来ていた、ということではないでしょうか。
対するエリザベスは、「頭は人並み」だけれど、クラスで一番のちびっこであり、偏食児で、爪を噛む癖やジェニファに従順なところからもうかがえるように、神経質で、やや気が小さいところがあると思われます。
ジェニファに命令された場合でもなければ、大人をすすんで困らせることはなく、「てもいい?」や「ありがとう」のしつけを守る、きちんとした従順な子です。
(一見)大人びたジェニファと(一見)幼げなエリザベス。師弟関係を結んだ二人は、この見た目通りの上下関係を築きます。
しかし読み進めるにつれ、ちらちらとジェニファの、子供としての素の顔が見え隠れしますね。
空を飛ぶ薬を、飲み薬じゃなく塗り薬にしようといった時、ヒキガエルを薬の材料にするのをやめた時のジェニファのほっとした様子などがそうです。
ヒラリエズラを可愛がる二人の姿は、子供らしく、作中で特に微笑ましいシーンでしょう(*´ω`*)。
そして、二人がずっと待ち望んできた飛び薬を作る日が来ます。しかし、いざ作る段になってエリザベスはすっかり愛着の沸いたヒラリエズラを犠牲にすることは出来ず、それはジェニファも同じでした。
ここではっきりするのですが、ジェニファは、「マクベス」に出てくるような、邪悪で不気味な魔女に憧れを抱き、「マクベス」の中のセリフを暗記するほど魔女になりきっていました。しかし、本当のジェニファは、邪悪で不気味な魔女なんかではなく、優しい女の子だったのです
一方、気が小さく、幼く見られていたエリザベスは、それまでずっと信服していたジェニファに逆らってでも、ヒラリエズラを守ることが出来るほどしっかりとして、自分の意志を持った子だったのです(・0・ ) 。
薬つくりの失敗で壊れてしまったかに見えた二人の友情ですが、エリザベスの素直さに感化されたのか、ジェニファは魔女の仮面をはずしてエリザベスの前に再び現れます。
実は、エリザベスは、「ふつうの子」になったジェニファを受け入れることの出来る、おおらかな心の持ち主でした。
仲良しになった二人のおどける様子も何とも自然です。この、ヒラリエズラ騒動からラストまでの展開の優しさと暖かさは、子供のころにも強く印象に残りました。
こうして、背伸びをしてすましていた子は笑顔を見せて子供に戻り、従順で気の小さかった子は、魔女修行を通して両親に秘密を持つことを覚えて一つ大人になったのでした。
同作者の「クローディアの秘密」と、ニューベリー賞優勝を競ったという逸話にも納得の、良作だと思います。
最後に、私の読解力が足りないのか、いまだにわからないことがあります
。
二人が出会った時、ジェニファがエリザべスの名前を知っていたのは、「同学年だから」で説明がつくとしても
「出会ったとき、なぜジェニファはエリザベスがクッキーをもっているとわかったのか」「シンシアのチュチュの衣装を落とすような早業をどこで身に着けたのか」と、ついでに「なぜエリザベスがナッツを持ってくるタイミングで塩を持っていたのか」。
これらがいまだ謎です(?_?)。わかる方、いましたら教えてください。
こちらは児童文学評論家の赤木かん子さんの感想。(※ネタバレしてます)私とは全く違う解釈ですね(・0・ )。
本作と同年に発表された同作者さんの「クローディアの秘密」
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- 作者: E.L.カニグズバーグ,E.L. Konigsburg,松永ふみ子
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- 発売日: 2000/06/16
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