児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

アル・カポネによろしく ネタばれなし感想

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ジェニファ・チョールデンコウ作

あすなろ書房

 

2005年ニューベリー賞オナー賞受賞 f:id:g-mccaghrean:20190623231229j:plain

面白さ ★★★★☆ 4点

メッセージ性 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20190623231307j:plain

読後感の良さ ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20190623231307j:plain

 

「カポネ洗濯サービス 一生に一度のチャンス!

アル・カポネマシンガン・ケリーなど、名高き社会の敵に、あなたの服を選択してもらいましょう。服はすべて、悪名高き受刑者たちの働く、アルカトラズ島の洗濯場で洗います!洗濯代はたったの5セント!」  本文より

 

内容 ムース少年は住み慣れたサンタモニカを泣く泣く離れて、アル・カポネをはじめとるする最悪の受刑囚を収容する刑務所の島、アルカトラズ島に引っ越してきました。それもこれもお母さんが自閉症の姉のために入れたい学校が近くにあるから。島でムースを待っていたのは個性豊かな面々。ムースはいやおうなしにトラブルに巻き込まれていきます。

 

感想 舞台は、かの有名なアルカトラズ島ですが、物語の中心は、主人公の自閉症の姉を中心とした、家族のお話です。ハラハラドキドキの冒険やサスペンスかとおもいきや、いい話系のヒューマンドラマに、ほんのちょっと刑務所島での非日常的なおもしろさを加わえた感じ。

 

内容が小難しくなく、読みやすかったです。キャラクターの個性がきちんと書かれていて、それぞれ好きになれました。ラストもよかった!

ほかの方の感想です。

 

 

http://www.yamaneko.org/dokusho/shohyo/tokusetsu/10th/new_rv4a.htm#alcapone 

http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2005/02.htm#myomi

アル・カポネによろしく

アル・カポネによろしく

 

 

以下、ネタバレ反転

なんか最初のほうは、パイパーと所長が腹立たしかった!なんか最初からムースのことを格下と思ってるようなこの親子に、イライラしました(`ヘ´#)

 

ナタリーの存在が家族に重くのしかかり、ムースも、お父さんもお母さんもつらい思いをしているところは、とても刺さりましたね。

私的な話になりますが、実は私も発達障害の診断を受けていまして。常々、「発達障害が認識されている世の中に生まれてきてよかった!」と思っているわけなんですが・・・。

いまでこそ、自閉症発達障害というものに理解がされつつあるけれど、この作品のころは自閉症児なんて、知的障害かキ〇ガイにしか思われなかっただろうな、と思ったら切なくてf:id:g-mccaghrean:20190705214931p:plain

自閉症の人の自叙伝で読んだのですが、自閉症からくる、怒りの発作って自分でも制御できないらしいですね。(ほんとは怒っているわけでもないらしい)

 

お母さんは、ナタリーがどうしてみんなと同じにできないのか、理由がわからなくて、でも希望にすがるようにしてなんとか心の平安を保っていて可哀そうだし、お母さんとムースの間に入って、ひたすらクッション役になっているお父さんも可哀そうだし、ナタリーのために小さいころからずっといろいろ我慢することが普通になっていて、「いい子」でいるしかない、ムースも可哀そう・・。

誰も悪くないのに…(ノД`)

家がこんな状況だったら、ムースは小さいころから普通の男の子みたいなやんちゃもあまりできなかったんだろうなあ、と。

ナタリーが子供たちの前で怒りの発作を起こしたシーンのお母さんのセリフ、「この子を見せものにしたくないの」は、は一瞬、お母さん、被害者意識持ちすぎじゃないの?って思ったけど、「いやいや、待て。自閉症なんて言葉もなかったころの人たちから見たら、ナタリーはただの狂人か白痴にしかみえなくて、好奇の目にさらされることもあっただろうな。お母さんも「ナタリーを守るのは私しかいない!」としかなりようがないし、周囲の反応に敏感になっちゃうよね」と思い直しました。

ムースの「おまえなんか大っ嫌い」も、これまでずっと我慢してきたものが限界になって一気にあふれちゃったんですよね。

お父さんが、ムースにビールを注ぐシーンもよかった。これは、お父さんが、ムースの苦労を受け止めて、それをねぎらったうえで大人として扱っている、ということですよね。洗濯事件の時のしかり方と言い、ほんとにいいお父さんだなあ。

ムースが、ナタリーの年齢のことでお母さんに現実を突きつけた後の、展開も感動的でした。お父さんもお母さんも、ムースが、ナタリーをただの「義務」や「重荷」だけじゃなく、家族愛をもって正面から向かい合おうとしてくれたことは何よりも嬉しかったのでしょうね。

 

そして最後は・・・・・・ちょっと粋というか、小気味いいラストが好き(≧∀≦)

わくわくできて、ちょっぴりほろりとさせらる 作品でした。老若男女、楽しめると思います。

読んでいただき、ありがとうございました!