児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

アベルの島 ネタばれなし感想

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ウィリアム・スタイグ作      麻生九美 訳     

評論社

1977年 ニューベリー賞オナー賞受賞 f:id:g-mccaghrean:20190818105655j:plain

面白さ ★★★★☆ 4点

メッセージ性 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20190819220522j:plain

内容 のんきな町ネズミのアベルは、ある日ピクニックにでかけて嵐に出あい、無人島に流される。愛する妻のもとへ帰るという決意を胸に、大自然の中でたった一人どうにか生きのびようとするが……。苦難を乗りこえ、強くたくましく成長してゆくアベルの、心あたたまる愛の物語。

感想 サバイバル冒険もの、というジャンルだけで収まらない、メッセージ性の強い良作です。

冒険ものが好きな方にはもちろんお勧めしますが、自然と人間のつながりや、人間の生き方についても訴えてくるものがあり、大変心揺さぶられる物語になっていますf:id:g-mccaghrean:20190819220559p:plain

 

 個人的には前半は若干眠くなりましたし、アベルの性格の軽さがあまり好きになれなかったりしました。

 けれど後半でぐっと引き込まれ、ラストが近くなった辺りでは胸がいっぱいになって、ちょっと泣きそうでしたよ(*´ο`*)=3 

子どものころは冒険のわくわく感を、大人になったら深い細部を楽しめる本ですf:id:g-mccaghrean:20190819220916p:plain

本書はもっと評価されるべき!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

アベルの島 (児童図書館●文学の部屋)

アベルの島 (児童図書館●文学の部屋)

 

 

ちなみにウィリアム・スタイグさんは、1983年に「歯いしゃのチュー先生」でもニューベリーオナー賞を受賞しています。

歯いしゃのチュー先生 (児童図書館・絵本の部屋)

歯いしゃのチュー先生 (児童図書館・絵本の部屋)

 

 

本書が好きな方は、ゲイリー・ポールセン 作の、1988年のニューベリーオナー賞受賞作である、   「ひとりぼっちの不時着」をお勧めします!大好きな本で、いつかレビューするつもりです。

 

ひとりぼっちの不時着 (海外児童文学シリーズ)

ひとりぼっちの不時着 (海外児童文学シリーズ)

 

 

以下、本書のネタバレ感想のため、反転。

とてもしんどいはずの状況で、アベル大自然への畏怖というか、共生意識、帰属意識的なものを感じていく、生命の本能的な生きる喜びとでもいうものに気づいていく、という過程はその心の豊かさに、読んでいるこちらも感動するものがありましたf:id:g-mccaghrean:20190819220522j:plain

さらにフクロウとの死闘シーンでアベルが感じた怒りなんかは、とても真に迫っていると感じました。

カエルのゴーワーの、変温動物っぽい、どこかずぶとくてヌボーっとした存在感も妙に説得力があって良かったですf:id:g-mccaghrean:20190819220816p:plain