児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

ゴールデン・バスケットホテル ネタばれなし感想

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ルドウィッヒ・ベーメルマンス作

 1937年ニューベリー賞オナー賞受賞 f:id:g-mccaghrean:20190617191103j:plain

BL出版

 面白さ ★★★★☆ 4点

メッセージ性 ★★★☆☆ 3点

ほっこり度 ★★★★★ 満点 f:id:g-mccaghrean:20190617191141j:plain

内容 屋根の上に金色のバスケットの飾りがついた古いホテル。セレステとメリサンド、ふたりの女の子はお父さんに連れられてベルギーの古都ブルージュにあるこのホテルにやってきました。ふたりのまわりでおきるゆかいなできごとは…。「マドレーヌ」シリーズの生みの親ルドウィッヒ・ベーメルマンスによる本格的な読み物。のちに絵本となるマドレーヌたち12人の女の子との出会いも織りこまれた楽しいお話です。

感想 あまりにも有名な名作絵本、「げんきなマドレーヌ」の作者さんのニューベリー受賞作ということで、期待値高めに手に取りました。マドレーヌシリーズでもなじみのあるイラストの、クラシックでセンスのいいイラストが素敵f:id:g-mccaghrean:20190617191312p:plainやっぱりこの作者さんのイラストの世界観好きだなあf:id:g-mccaghrean:20190617191246p:plain

 

本書が書かれたのは、1936年.。

ベルギーの都市ブルージュが舞台。物語全体に、のんびりとした優しい雰囲気が漂っていて、時々そこにユーモアが混じってクスリとさせられます。

特にわくわくしたり、感動したりするタイプの本ではないですが、ほっこりできます。

 本作はマドレーヌシリーズの前に書かれたものということですが、なんと作中にマドレーヌが登場します❗これは嬉しい驚き😃

ところどころが、のちのマドレーヌシリーズの設定と異なるところがありますね。シスターの名前とか、制服のデザインとか。

 

ゴールデン・バスケットホテル

ゴールデン・バスケットホテル

 

 

ブルージュという町について軽く調べてみました。この町は、ヨーロッパで北のヴェネツィアと呼ばれる、古くからの運河の町なんだそうです。

昔は芸術の中心として、数多くの芸術家を輩出したとか、町全体が世界遺産になっているとか、ずいぶんロマンティックな町なんですね。

 

作中で、姉妹と、姉妹のパパとヤンとの4人で遊びに行った鐘は、どうやら鐘楼 ベルフォート(Belfort van Brugge)という鐘のようで、1996年にユネスコ世界遺産に登録されているらしいです。

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出典: wikipedia掲載画像  作者Graham Richter


 Wikiによると、16世紀より前は、時計は手動で、ベルの音は、市の門の開閉や労働時間の始まりと終わりを告げるものだったそうです。当時は、日が落ちてからの暗い中での労働は禁じられていたとのこと。

 こちらはみんながボートに乗ったローゼンフット河岸。

 

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雰囲気ありますね。

出典:https://www.tripadvisor.co.za/LocationPhotoDirectLink-g188671-d12240876-i336670165-Rozenhoedkaai-Bruges_West_Flanders_Province.html

マルクト広場の様子

 

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出典:https://visit-bruges.be/see/parks-squares/market-square-markt

本での印象通りの、美しい町ですねf:id:g-mccaghrean:20190616231221p:plain

 作中に出てくる、「アヴィニョンの橋の上で」の歌。

歌詞は以下のサイトでみれます。http://www.worldfolksong.com/songbook/france/avignon-bridge.html

以下に、ちょっと長くなりますが、作者、ルドウィッヒさんの経歴が興味深いので、載せておきますね。

もしかしたら、「ゴールデン・バスケットホテル」の可愛く微笑ましいイメージが壊れるかもしれないので、大丈夫、という方だけ見てください。以下、英語のwikiより引用。

 

 …ルドウィッヒ・ベーメルマンスさんは1898年、オーストリアハンガリーのメラン(現在のイタリア)生まれ。ルドウィッヒさんのお父さんはなんとホテルを所有していたそうですf:id:g-mccaghrean:20190617191141j:plainそして彼はオーストリアのホテルで彼の叔父のもとで見習いをしていました。

ああ、この体験をもとに、「ゴールデン・バスケットホテル」を書いたのだなf:id:g-mccaghrean:20190617192550p:plain、と思うじゃないですか。

ところが、ところが、ルドウィッヒさんはたびたび殴られ、さらにはレストランのボーイ長によって鞭打ちさえされたとか。

このとき、まだルドウィッヒさんはせいぜい中学生くらいの年齢だと思われます。 叔父の証言によると、ルドウィッヒさんはボーイ長に、もし再び鞭打たれたら銃で報復するだろうと警告したのですが、ボーイ長は彼の警告を無視し、ルドウィッヒさんを鞭打ち、そして叔父は報復で彼を撃ち、重傷を負わせました。(叔父が撃ったのが、ボーイ長なのか、ルドウィッヒさんなのか、原文でもわかりにくいですf:id:g-mccaghrean:20190617192252p:plain

彼は、ホテルを改革するか、アメリカに移住するか悩んだ挙句、16歳で単身アメリカへ渡ります。

 

・・・鞭うちって・・・・。昔の本ではよく出てくるけど、やりすぎ…Σ(゚д゚;)。今だったら大問題ですね。銃で報復もやりすぎですが。

ルドウィッヒさんはその後、数年間、アメリカのホテルやレストランで働いていたようです。 1917年に、彼はアメリカ軍に加わりました。しかし、彼の血統がゲルマン(ドイツ)だったため、にヨーロッパに送られることはありませんでした。彼はやがて中尉に昇進しました。彼は陸軍での経験を本「My War With the United States(アメリカと私の戦争)」に書いています。

1920年代、ルドウィッヒさんはホテルで働いている間、芸術家や画家になろうとしましたが、かなりの困難を抱えていました。 1926年、彼はニューヨークのリッツカールトン(※世界規模のホテルブランド。東京だと六本木にある)での仕事を辞め、漫画家になりました。

うーん、波乱万丈…( ̄□ ̄;)。作者さんのホテル就労体験は、本のように楽しく穏やかなものではなかったようですね。

 

↓あまりにも有名なマドレーヌシリーズ

 

げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ)

げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

読んでいただき、ありがとうございました!