児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

SO B. IT (ソー・ビー・イット) ネタばれなし感想

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サラ ウィークス作

エクスナレッジ(出版社)

面白さ ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

メッセージ性 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

 先が気になる度 ★★★★★満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

内容 ネバダ州のリノに住む、知的障害者の母親をもつ少女ハイディ。隣人に支えられた暮らしは、最小限にシンプルだが愛情に満たされていた。
しかし12歳になった頃、自分のルーツを知りたくなり、偶然見つけた古い写真をきっかけに、たった一人でNYに向かってバスで出発する。不安や羨望、うそをつくこと、友情、期待、失望、そして他人のあたたかさ。やがて冒険の末に見つけた、出生の真実とは?そして真実を知ったとき、少女は…

 

「おばさんはあたしが幸運の星のもとに生まれたっていう。でも、あたしはこう思う。おばさんが二つの部屋のドアを通り抜け、台所の床の上にいる母さんとあたしを見つけてくれた日に、たぶんあたしの幸運は始まったんだろうって」   本文より

 

感想 この本は読者の心をつかんで、話に引き込むのが非常に巧みです。読みはじめは、主人公のハイディの置かれた状況がよくわからず、やがて彼女の口から少しずつ、それは語られていくのですが、その中にはいくつかの空白があり、不可思議な謎となって(・_・?)、お話を先へ先へと読ませていきます。

 

そのハイディの暮らしている、ちょっと変わった日常は、珍しくて面白く、読みながらも常時好奇心を刺激され続けます。ハイディの友達のザンダーのエピソードも、ハイディの持つ、ある力も何か非常に奥深い意味を持っていそうで、心に残ります。


そして彼女の真実探しの旅をワクワクと楽しみながら、早く謎の答えが知りたくてうずうずしました。途中で登場してくる通りすがりのわき役達も、個性が際立っています。

ハイディが真実を知っていく過程も、読みごたえがあります(・0・ ) ホッホー。とてもよくできた本ですf:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

 

SO B. IT (ソー・ビー・イット)

SO B. IT (ソー・ビー・イット)

 

 映画化されていたようです。


So B. It (2018) - Official clip "Kitchen dance"

 

 

 

以下、ネタバレ感想

 

反転  ハイディは、この世にはどうしても知ることが出来ないことがあると知りました。けれど、ハイディが、本当のことを知りたくて旅に出たことは間違っていなかったと思います。その旅はこれまでの生活や状況をめぐる謎への探求の旅でした。ハイディが小さいころは特に疑問を持たずに過ごしてきた、その生活と謎の真相を突き止めたいと思うのは、ハイディが大人(この場合はおばさん)の言うことをうのみにせず、自分で考え、決定するだけ成長したということを意味するのでしょう。大人(おばさん)への反抗は子供から、若者へと移り変わるハイディに必要な通過儀礼だったのですね。