ニーノック・ライズ ネタばれなし感想
ナタリー・バビット 作・絵
評論社(※絶版してます)
1971年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★☆ 4点
メッセージ性 ★★★★★ 満点
ジャンル サスペンス
内容 謎の魔物がすむという山脈の絶壁ニーノック・ライズ。毎年秋になると盛大な市が開かれる。ふもとの村インステップに訪れた少年イーガンは、その魔物の正体をつきとめようとする。その頂でイーガンが発見したものは…
「そう、ここにこそ山脈の本当の魅力があった。イヴの禁断の果実のように、いいものか悪いものかはいざ知らず、山脈の謎がひそんでいた。というのは、はげしく冷たい雨のふる晩には、その霧のどこかから、何やら知れぬ魔物のうなり声がきこえてくるのだった。」 本文より
感想 話は伝説の物語のように始まって、恐ろしい化け物の言い伝えを語りだします。巧みな文章が、物語の導入部をとても、わくわくするものにしていますね(*゚▽゚*)ドキドキ。
読みやすい文章と、おもしろそうな出だしにすっかり引き込まれて、一気に読み切ってしまいました。
そして、最後まで読み終わると、最初に感じた印象がすっかり変わっています。非常に奥の深い本なので、大人が読んでも面白いと思います。
最後のほうでのアンソンおじさんのセリフが、読んだ後も残りました。
真実とは、人間の固定概念とは、など様々な解釈の出来るお話です。
以下ネタバレ感想注意です。
反転 ニーノックライズの魔物は、村人にとって脅威である以上に誇りであり、お化け屋敷的なある種のエンターテイメントでもありました。皆は恐れている以上に魔物を必要としていたのです。
この物語の言わんとすること、作者さんが伝えたいことは何だろうと考えたのですが、いくつか考えられます。
①人間は固定概念や思い込みに固執して、真実を受け入れようとしないものだ
②真実を皆が歓迎するとは限らない
③アンソンおじさんの言うように、自分が信じていることの前には真実はどうでもいいということ
④結果がどうであれ、主人公イーガンは「人が真実だと信じていることはあくまで『真実だと信じたいこと』であり、真実だと思っていることはただの思い込みかもしれない」ということを知り、物事を俯瞰して見るということを知った。
どれが、作者さんの意図かはわかりません。しかし先ほども言ったようにこの物語のメッセージ性は深く、様々な解釈ができるのです。ファンタジーに見せかけて、非常に鋭く人間の心理を衝いたヒューマンドラマだといえますね。