児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

まぬけなワルシャワ旅行 ネタばれなし感想

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I・Bシンガー作

 

1969年ニューベリー賞オナー賞受賞 f:id:g-mccaghrean:20190612205729j:plain

岩波書店

面白さ ★★★★☆ 4点

メッセージ性 ★★★★☆ 4点

ゆかい度 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

内容 まぬけばかりの町ヘルムに住む、とびきりまぬけなシュレミールの抱腹絶倒の旅行談、欲の皮のつっぱった金持ちをまんまとだました貧乏な男の話、魔女と高僧の術くらべなど、名ストーリーテラーによるこっけい話や不思議な話8編。

 

感想 ポーランドユダヤ人作家の描く、ユーモラスな寓話集f:id:g-mccaghrean:20190612205940p:plainエスプリの効いた小話にクスリと笑いたい人向け。

各話ごとに感想書きますね。

 

  • ツィルツルとペチツァ

ペチツァは「あちらの世界」が気になるなら、なぜ自分から出向かなかったのだろう。何を伝えたいのか、よくわからない話。起承転結じゃなく、起承でいきなり終わった感じ(゚ペ)。

 

  • ラビのレイブと魔女のクーネグンデ

これはおとぎ話らしくて面白かったです。

ラビってユダヤ教の宗教的指導者の役職のラビですよね?児童書だから、ここは注意書きをつけたほうがよかったのでは。子供には難しいかと思います。

 

  • ヘルムの長老とゲネンデルの鍵

これもユーモアが聞いてて、ツッコミ待ちな感じで、楽しい話でした(´∀`)。作中に出てくるブリンツェは、東欧系ユダヤ人の家庭料理というかお菓子で、中にチーズを入れて揚げた、甘い春巻きのようなクレープのようなものらしいです。

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出典:G'daySouffle

http://www.gdaysouffle.com/cheese-blintz-with-strawberry-sauce/

若干ネタバレしてるので反転

だんだん、シュレミールの愚直さとくじけないところがけなげに思えてきて、そうするとこの話がただの胸糞話に思えてきてしまいました。間抜けな笑い話として読めればいいんでしょうけど、悪いやつが裁かれないのが納得いかない(。-`ω-)。面白いんですけどね。

 

  • ウツェルと娘のビン子

冒頭の大阪弁にちょっと違和感はありましたが、珍しくストレートにいい話でした。実に正統派な寓話という感じ。

 

  • メナゼエの夢

一番好きになった話です。この話は文体もなんだか詩的で美しくて、作者がノッて書いてるのが伝わります。

以下ネタバレ反転

メナゼエの来た場所の意味が分かった瞬間、もう感動しちゃいました(ノД`)。孤独で惨めな思いをしていたみなしごへの救い。胸にしみましたね。あの城に来る前の現実世界の、ちょっと不思議な雰囲気は、前ぶれ?

 

これはよくできた話だと思います。題名を飾るだけありますね。大とんまグロナムの判決は、物語的には、おバカだと言いたいのでしょうが、もう賢明に思えてきます(^O^)。シュレミールが夢で見たブリンツェが、おいしそうだなあ。

 

▲総評

ちょっと気になったのが、基本、この物語全部が、ポーランドユダヤ人の文化のお話なので、日本人だとよくわからない単語が作中にいくつも出てくるんですが、そこに説明がないんですよね。最後まで読むとあとがきのところにちゃんと、用語解説みたいなのあるんですが、わかりにくくて、そこはちょっと不親切だと感じました。

それにしてもとんまとんまと言われてるヘルムの人たちの言うことって結構哲学入ってますよね。何気に深いです。

あとがきにも、面白い小話が出てきて、これがまたいいので(≧∀≦)、お見逃しなく!

まぬけなワルシャワ旅行 (岩波少年文庫)

まぬけなワルシャワ旅行 (岩波少年文庫)

 

同作者の「やぎと少年」

やぎと少年 (岩波の愛蔵版)

やぎと少年 (岩波の愛蔵版)

 

こちらも本作と、つくりはほとんど同じ、ヘルムの町を舞台にした短編集。感想はこちら

 

読んでいただき、ありがとうございました!