揚子江の少年 ネタばれなし感想
エリザベス・ルイス作 小出正吾訳 1958年版
講談社 (絶版してます)
(※ 本書は、3回翻訳されています。『長江上流の若者』本間立也訳 改造社 1938版/『揚子江の傅さん』小出正吾実業之訳 日本社 1942年版など)
1933年ニューベリー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性 ★★★★★ 満点
わくわく度 ★★★★★ 満点
内容 舞台は1930年代の中国。父を失った少年は、農村から母と二人で都の重慶に出て、銅細工師の徒弟になるべく、小僧として働き始めます。
用語解説
苦力 クーリー。もと、中国の下層の人夫。東洋各地の下層労働者。
立ちん坊 道端や坂の下に立って待ち続け、荷車が通ればそれを押すのを手伝って駄賃を貰うことを職業としていた者
p21 かまどの神さま。
―中国では古来の習慣として、竈神(かまどがみ)が祭られていた。旧暦12月23日(または年によって24日)は祭竈節(さいそうせつ)で、かまどの大掃除をして、かまど神に天帝へ家庭が円満であることを報告してもらった。この日を旧正月(大年)に対して、小年(シャオニェン)とも呼んで、お正月の最終準備を開始する日とした。
P26
印半纏 (シルシバンテン)
―襟や背などに屋号・家紋などを染め抜いた半纏。主に職人や商家の使用人が着用する。
駕籠舁(かごかき)
―駕籠をかつぐことを業としている人。
感想
・いい点 成長物語、サクセスストーリーとして完璧。
出だしから引き込まれます。
主人公とお母さんの、無知さがリアルで人間描写が真に迫っています。登場人物の物の感じ方、考え方も現代の観念から読むと滑稽であったりして、逆にリアリズムを感じました。
当時の人々の、貧しさ、無知さ、身分や生まれによる不条理さ、そして重慶の都の喧騒や生活臭まが、時に生々しく、時に生き生きと描写されていました。
巧みで美しい文章にのせられて語られる少年傅さんのサクセスストーリーには非常にわくわくさせられます(*´∀`人):・:*:・。
主人公の数々の失敗は、若い時にだれでもするようなことばかりで、賢いだけでなく、失敗を重ねる主人公に感情移入して読めました。
非常に完成度が高くて、これぞ名作という言葉にふさわしい作品ですね
もっと多くの方に読んでいただきたい。
・悪い点 出だしから子供には難しいであろう言葉が出てきます。
本書が1950年代に訳されたことを考えれば、仕方ないですが、児童書のわりに、説明書きもなくて不親切。辞書を引きながら読みました。
最後に、本書が好きな方に、ぜひおすすめしたいのが、2002年のニューベリー賞受賞作、「モギ ちいさな焼きもの師」 リンダ・スー・パーク作です。こちらは昔の韓国が舞台で、題名からわかるとおり、焼き物師を目指す少年のサクセスストーリーです。
- 作者: リンダ・スーパーク,Linda Sue Park,片岡しのぶ
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2003/11/01
- メディア: ハードカバー
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