アルプスの赤い旗 ネタばれなし感想
ジェイムス・オーマン(アルマン)作
持丸良雄訳
講談社(1958年版)
新訳は「山上にひるがえる旗」 学研(1971年版)
※ともに絶版してます
1955年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性 ★★★★★ 満点
熱血度 ★★★★★ 満点
内容 主人公のルデイ少年は、スイスのシタデル山のふもとに生まれ、毎日この山を見上げながらいつか必ずこの山を登ってやろうと心を燃やし、夢を見ていました。
だが、シタデルは、アルプスの数ある山々のうち、まだだれ一人登ったことのない、空にそびえたつ巨大な山です。
山になれた村人さえ、このシタデルには恐ろしい悪魔がすんでいると近寄ることさえ恐れています。けれどルデイ少年は勇敢にこの魔の山に立ち向かってゆきます。
感想 すごくおもしろかったです!冒険小説として、非常によく出来た作品でした。
本書のテーマは「困難な夢にめげずに立ち向かうこと」だと思うのですが、ルデイの「立ち向かう勇気」はすごいです(*´∀`人)。周りにどんなに反対されようと、命が危なかろうと自分の夢を貫ぬくなんて、勇気がないと出来ないんだなあと教えてくれます。
周囲のみんなが「そんな事できっこない」ということに挑戦することの大事さも。
この物語はわかりやすさもよさの一つで、現役を引退した元ガイドとか、いけ好かないよそ者ライバルとか、主人公が登山中に命を落としたお父さんに憧れて形見を大事にしてたり、スポーツ映画や少年漫画の定石を踏んでいる感じ。
途中で「ああ、これは登山をテーマにしたヒーローものなんだな」と気づきました。
アルプスの最難関、人跡未踏の地であったシタデル登山に挑んだヒーロー、ルデイの物語ですね。
ベタと言えばベタな話ですが、王道というのはやはり面白いものだと思わされます。
山場やピンチなどがややあっさり目と言えばあっさり目だけれど、児童書として安心して読める清く正しく健やかな良作でした。
ちなみに作中に出てくるクレバスってこんな感じ。
出典:【閲覧注意】心臓が縮み上がる!?クレバスから見下ろす風景
シタデル山のモデルになったマッターホルンの風景。
作中に出てくる、氷の壁
まとまりのないネタバレ感想
ルデイに優しく忠告しつつ、身の危険を冒してまでルデイの夢に協力しようとするトーじいさんは粋ですね。
トーじいさんが参加を表明するシーンは、すごいテンションあがって「ぅおお(o゚Д゚o)!」と心の中で叫びました。
これは熱い!
もうね、あたかも「荒野の七人」でスティーブ・マックイーンが「俺が二人目だ」と無言で2本指を出すシーンのように熱い(たとえが古い)
ただルデイが、お母さんや、周りに迷惑をかけまくることを分かっていながら、一人シタデル登山に乗り込んでしまうのはなあー(´・ω・`)。
軽はずみな行動で、同行者の命も危険にさらすということを体験したばかりなのに勝手に先に進んでしまうので「おいおい」と突っ込まざるを得ません。しかもみんなそれを叱らず、トーじいさんに至っては激励してるし。
これがありか無しかは人によって判断が分かれるかもしれません。
作中では、ルデイの行動はほとんどとがめられることなく、トーじいさんもウィンターさんも、登山に人生かけてきたような山男ですから、ルデイの功績を褒めるんですよねσ( ̄∇ ̄;)。
だがしかし!このガイド一行は、その場の勢いでたいした考えもなく、勝手に危険な山に登って、危なくなったらふもとの人に助けを求めに行くってあり得ないくらい迷惑ですって。
(SNSがあったら叩かれてそう)
自分のやりたいことを貫くために人に迷惑をかけるのが非難の対象になりがちな現代日本を意識して、色々考えこんでしまいました。
子どもが危険なことをしようものなら、親の監督不行き届きを問われる世の中ではこんなふうにはいかないよなあ、とか(。-`ω-)。
ルデイママがかなりあっさりルデイの行動を受け入れちゃったのは意外でした。私がルデイのお母さんだったとしたらルデイの行動を認められるかとか・・・悩むところです。
ところで本書は旧訳、新訳ともに絶版していますが、非常によくできた本なので、再販を希望します。よければぜひご協力お願いします。 www.fukkan.com読んでいただきありがとうございました!