黄色い老犬 ネタばれなし感想
フレッド・ギプソン作 山西英一訳
1957年ニューベリー賞オナー賞受賞
面白さ ★★★★★ 満点
メッセージ性 ★★★★☆ 4点
ワイルドさ ★★★★★ 満点
内容 1860年代のテキサス、父親が牛を売りに出かけた間、父親から家をまかされた少年トラビスと、迷い犬との間に起こった様々の出来事が少年の目を通して描かれる。
すると母親熊が沢の岸をチビのアーリスと子熊のいるほうへ突進したちょうどその時、灌木の茂みから黄色なものがサッとひらめいた。それは、あの大きなイェラーだった。犬は怒った雄牛のように吠えたけった。大きさも体重も雌熊の三分の一もなかったが、横合いからパッと躍りかかると,みごとに雌熊の足をすくってゴロッと転がした。 本文より
感想 かなり古い話で、動物ものということで、きつそうだな、と敬遠してた本書。
まあでも読んでみたら予想を上回る完成度とパワーを持った物語だったので読んでよかったです。とてもよく出来た話でした。普通の小説の3分の1くらいのボリュームでサクッと読めるのもいいですね。
この当時は、今みたいに暮らしに余裕もなかっただろうし、動物の扱い雑だったろうなーと思いながら読み始めたら案の定、家畜たちの扱いや食料を狙ってくる動物への容赦ない描写がありまして。まあ、児童書なりの容赦のなさではありますが。ちょっとしんどかったけれど、まあこれはしょうがないし、命と命との生のやりとりという感じがして、現代日本に暮らしていると体験できないようなそのハードさもちょっと感動するくらいでした。外連味もきれいごともない、粗削りな魅力が本作にはありますね。
そして開拓民の暮らしの大変さを垣間見ることも出来ました。当時は14歳で一人前として家族を守ることをまかされることは普通だったんだなあ、私が主人公だったら一家全滅してただろうな( ´△`)とか思いながら読んでましたよ。
さらに、開拓民たちが、物がない中でどんな風に知恵と工夫を使ってきたかも見所ですね。私は苦労知らずなので、文明の利器がない生活で主人公たちが懸命に生きる話はひたすら感心してしまいます。
で、肝心の少年と老犬の絆についても、とてもよかった。少年は、犬をそんなにべたべたと可愛がる感じでもなく、からっとした相棒関係が描かれていて、それがまた男の子の世界のリアル感があり、作風に合っていました。
ただ最後は冒頭でネタバレしてるので予想通りといえば予想通りなんですが、個人的にはそこだけは予想を裏切ってほしかったです。昔の動物もののお約束展開はあまり好きじゃないので。
1959年にディズニーによる実写映画が公開されていますね。
読んでいただきありがとうございました!