児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

ビーバー族のしるし ネタばれなし感想

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エリザベス・ジョージ・スピア作

あすなろ書房

1984ニューベリー賞オナー賞受賞f:id:g-mccaghrean:20181205020107j:plain

面白さ ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

メッセージ性 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

わくわく度 ★★★★★ 満点f:id:g-mccaghrean:20181205022501j:plain

 

内容 1768年春、マットと父さんはこの森に住む最初の白人として、マサチューセッツ州のクインシーから越してきた。夏、丸太小屋を完成させた二人は、次なる計画を実行することを決めた。それは期せずして、13歳の少年マットにとって、生涯忘れることのできない大冒険となった…。文字の読み方を教えるかわりに、マットがインディアンの少年から学んだのは森で生きるための知恵。…そして、かけがえのない友情。

 

感想  本書は、ワクワクドキドキの冒険物語であると同時に、ひとつの民族の衰退の歴史の一端を垣間見れる、奥深い本でもあります。

 

インディアンといえば、荒々しく恐ろしいイメージとともに、いかめしく、誇り高いというイメージも同時にあると思いますが、この作品に出てくるインディアンは、後者のイメージに近いですね。作者さんは当時のインディアンの暮らしを本当によく調べたのだな、と感じられます(∩・∀・)∩オォ!。当時のインディアンたちがどんな人たちだったのか、私もいくらか本で読んだくらいで、それほど詳しく知っているわけでもありませんが、読んでいるととても「本当らしく」、「ああ、こうだったんだろうな」と感じられます。

主人公、マットの体験する冒険はワクワクして楽しいです。マットと一緒になって「次はどんなことをするんだろう」と身を乗り出すように読んでしまいますね(゚∀゚*)ワクワクインディアンの少年、エイティアンの話す、昔話やインディアンの村のお祭りの部分なんかすごく興味深くておもしろいです。マットがエイティアンと張り合うところも、いかにも男の子同士らしくて、リアルに感じました。(o゚Д゚o) 

インディアンたちの、思慮深く、崇高な生き方が胸を打ちます。

けれど読んでいると、白人たちがインディアンたちにした仕打ちや非人道的な行為の数々が、二人の幼い少年たちの友情に重苦しく影を落としていて、非常に複雑な気持ちにさせられもします。歴史的に考えると、インディアンたちはこの後も決して楽観視できるような境遇にはならなかったと思えるし、読んだ後も、苦く胸に残ります(´・ω・`) 。当時の白人から見たら野蛮人であったインディアンという異質な存在を理解し、素直に受け入れたマットが素敵。

マットはインディアンたちとの出会いで、技術的にも、精神的にも、大きいものを得たのでしょう。それまでの自分の人生とは全く違う、生き方を知ることが出来るって人生観変わるくらいすごいことですよねf:id:g-mccaghrean:20181217160317p:plainこんな素晴らしい体験をできたマットがうらやましくなります。

 

ビーバー族のしるし

ビーバー族のしるし

 

 

 

ちなみに作者のエリザベス・ジョージ・スピアは、ニューベリー賞常連作家で、他に1959年にニューベリー賞を受賞した 「からすが池の魔女」があります。

 

からすが池の魔女

からすが池の魔女

 

 私の感想はこちら。

 1962年には同じくニューベリー賞受賞の「青銅の弓」(絶版)を

 

青銅の弓

青銅の弓

 

 

書いています。これらもすごくいい本なのでよければ読んでみてください。絶版になっていますが、図書館で取り寄せリクエストをすれば読めると思います。