児童書のレビュー・考察ブログ

主に海外の小学生・中学生向け児童書の感想、考察をしています。

その年、わたしは嘘をおぼえた  ネタばれなし感想

 

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ローレン ウォーク作

さえら書房

面白さ ★★☆☆☆ 2点

メッセージ性 ★★☆☆☆2点

 

2017年ニューベリー賞オナー賞受賞

内容 2つの世界大戦が暗い影を落とす1943年、「オオカミ谷」と呼ばれる丘陵地で静かなくらしを送るわたしの前に、黒い心を持つ少女が現れた。わたしを、わたしの大事な人たちを、傷つけ、わなにかけ、おとしいれていく。わたしは闘うことにした。けれども、ことは、それだけですまなかった――
嘘は真実をよそおい、11歳の少女を迷わせる。せつない決心は、予期せぬ結末へ……

感想 うーん、つまらなくはないです。普通に読めるけれど、かといって特筆すべき点があったり、人に勧めたくなるような作品でもないですね( ´△`)。

 

個人的感想なのですが、もうしわけないけれど、あまり褒める点が見当たりません・・・。メッセージ性も薄いように思えます。なん箇所か、作者が何かを読者に伝えたいことがあるようなところはあったのですが、それに心を動かされませんでした。

文章が、作者の癖なのか、訳者の癖なのかわからないけれど、ところどころ何が言いたいのかわかりづらいと感じました。

世の中の偏見に抗い、大切なものを守るために奮闘した少女の成長物語、ということなのでしょうが、ストーリー後半が解決しそうに思えてしなくて、グダグダに感じてしまったり、話のキーパーソンとなる、ある少女のキャラクターがつかめないうえに、こいつが憎たらしいことばかりするもんだから(# ゚Д゚) ムッカー不快な気持ちばかり強まってしまい、それがカタルシスとして昇華されることなく、不快なまま、終わりました。

この物語の中心となる事件の部分でも、ミステリアスな謎があったり、ハラハラドキドキのスリルがあるわけでもなく、ストーリーとしての誘引力に欠けました。

よかった点を挙げるなら、お母さんのキャラクターはそれなりによかったかも。

読書メーターでもアマゾンでも高評価なので、自分がこの作品の良さを受け取れなかっただけなのかもしれません(´・ω・`)

 

 

 

 

 

やまねこ翻訳クラブでの紹介ページ 

www.yamaneko.org

そこにリンクの貼ってある、月刊児童文学翻訳2017年9月号)レビューを掲載しておきますね。ネタバレしてるので未読の方は気を付けてください。↓

 

 

 

 

 

 第2次世界大戦が影を落とす1943年秋。もうすぐ12歳になるアナベルは、米国の片 田舎の小さな村で暮らしていた。ある日、村の学校にベティという少女が転校してく る。ベティは学校帰りにアナベルを待ちぶせしては、恐喝まがいのやり方でいじめる ようになった。その場を救ってくれたのは、風変わりな見た目と行動で村人たちから 気味悪がられている男性、トビーだ。彼は第1次世界大戦で心に傷を負い、人づきあ いを避けるようになったのだが、実は美しい自然を愛する心優しい男性だった。いじ めがやみ、一見、平穏な日々を取りもどしたかに見えたが、学校で事件が起きる。何 者かの投げた石が当たり、クラスメートが失明したのだ。ベティを疑うアナベルだが、 ベティはそのとき学校の鐘塔に登っていて、トビーが石を投げるところを見たと主張 する。しかも、彼の無実を証明するものは何もない。そんな中、ベティの行方が分か らなくなり、大人たちはトビーが誘拐したのではと疑いはじめた。  作品の冒頭、「12歳になる年、わたしは嘘をつくことをおぼえた」という意味深長 な言葉に興味をそそられた。物語の前半、アナベルはいじめの事実を家族に隠しはす るが、「嘘をつく」と呼べるような場面はなく、思わず首をかしげた。だが読み進め るにつれて、アナベルのついた「嘘」の意味が明かされていく。それは、親子ほど年 が離れていながらも、不思議な友情で結ばれたトビーのためについた嘘だった。あた たかな家庭で人間の醜い面を知らずに育ったアナベルが、嘘をつくことをおぼえた。 そのことでアナベルは、それまでの純粋さを失ってしまったのかもしれない。しかし、 大人に守られるだけの存在ではなくなり、大切な人を守るための勇気と行動力を身に つけ、強くなったともいえるのではないか。ベティからのいじめにも、トビーに向け られる大人たちの偏見にも果敢に挑む主人公の姿は、胸に迫るものがある。  本書のタイトル "Wolf Hollow" は、村の小さな谷の名前だ。その昔、穴を掘って 捕まえたオオカミを残らず撃ち殺していた歴史に由来するという。読み終えてから振 り返ると、この地名は物語の切ない結末を暗示するかのように思えてくる。その結末 とは……。ぜひ、あなたも読んで確かめてみてほしい。